Throughout the ages | ナノ


▼ 038

ははははは・・・・・



寝れないわ・・・・・聞こえるはずのないイズミル王子の笑い声が聞こえる気がする・・・そんなわけないのに──────


『もうすぐ夜が明ける・・・ もうすぐ・・・メンフィスとの婚儀の朝が・・・』


私はエジプトの王妃になる──────






その頃ルカはイズミルがアイシスに囚われたという知らせを聞いていた


「な、なにっ!イズミル王子が女王アイシスのとらわれの身となられたというのか!」

「しっ!ルカ まわりに注意しろ」

「そんな、ばかなっ あの用心深い王子がアイシスに・・・い、いったいどうして!?」

「残念ながらルカ!国境において手間どり・・・気取られぬようとの配慮から二手に分かれたため、間道でその少人数のところを不意をつかれ王子はアイシスの手の者に捕らえられた」

「なんと・・・!女王アイシスはあの難所・・・狩人さえ滅多に通らぬ間道まで兵をおき、下エジプトへくる者を厳しく詮議しているのか」

「そうなのだ」

「何かあるのでは・・・!一刻も早く王子をお助けせねばならぬ!」



もうすぐ夜が明ける・・・今日イシスの娘の婚儀が行われる
今日メンフィス王は賢く心優しいイシスの娘を妃にむかえ、エジプトはますます強国になるだろう
わたしの任務は・・・?
王子!ご指示を待っていたのです



「行くぞ。王子をお助けする!」

「ルカ!いま動けば怪しまれるぞ」

「いや。いまは夜明け前・・・今日は兵士も祝賀に気をとられ川を下る者など注意せぬ!小舟で一気にナイル河を下エジプトへ下るぞ!」

「おお!」


イシスの娘・・・


「急ぐんだ!」

「急げ!急げ!」



イズミル王子、いまおん元にまいります
イズミル王子!いま おん元へ・・・









──────はるかなーーー
・・・・はるかな三千年の歴史のなか・・・・
古代エジプトのテーベの都に・・・
いましも 婚儀の朝は明けようとしていた・・・










私はあの後も結局寝られないでいた


『日が・・・・・ナイルに日が昇る・・・・・』


イシス・・・私はこれでいいのよね
あなたが私をあの時この時代へ送ってくれなければ私はメンフィスに出逢うことは出来なかった
最初は恐れ近寄りたくなかったメンフィスを愛し私は今日エジプトの王であるメンフィスの妻にエジプトの王妃となります
どうかこのエジプトを豊かにするために私にあなたの加護を──────



「ミャー」

『ふふ、祝福してくれるの?』



メンフィスが私へ贈ってくれた猫の柔らかい毛をそっと撫でた



それから少ししてきてくれた女官達に支度をしてもらっているとナフテラさんが笑顔で駆け寄ってきた



「マリア様。メンフィス王が狩の儀式からお帰りです はやくお庭へ」

『えぇ。今行きます』










「マリア!マリア!」

『メンフィス』

「目が覚めたか」

『メンフィスはこんな朝早くから何を?』


私がそう言うとメンフィスは1度笑ってからドサリと私の前に何かを置いた


『これは?』

「これは狩の儀式で捕った獲物だ」


国によってやっぱり違うのね
つまりもう婚姻の儀式は既にはじまっている


「これは婚儀の前の狩の儀式なのだ。これはそなたを産みし女神イシスに捧げる獲物」

『イシスへ・・・』

「そうだ。マリアを産みし女神イシスへの感謝の供物だ。」



そなたは女神よりわたしに遣わされた聖なる娘・・・



「今日の日を待ちかねたぞ マリア。今日・・・そなたはわたしの妃になる」

『えぇ。私はあなたの妃になる。メンフィス』

「どうした」

『あなたを愛してるわ』

「マリア!!」


私が愛してると言ったことが嬉しいのかメンフィスが抱きついてきた


「私は今日の日を待ちかねていた」

『私もよメンフィス』



テーベの都は夜明けと共に
婚儀の喜びにわきたっていた・・・







「マリア様お時間ですよ!」

『あら?ルカはどうかしたの?』

「さあお式の支度を急いで」

「昨夜から急用で出かけたようですわ」

「朝からどこにもいないんですよ」

『そう』



最近はキャロルではなく私のそばにずっといたのにどうしたのかしら?
婚姻の儀式にルカはいなくても大丈夫だものきっとルカのことだからいきなり帰ってくるわよねと私はミャーッと足元で鳴いた猫を撫でた


「マリア様この黄金の冠を・・・さあ お式のお仕度ができましたよ」

「まあーっ 黄金の髪がキラキラして・・・ つややかな白いハダがますます引き立っているわ!」

「とってもきれい・・・」

「マリア様ご婚儀の行われるアメン神殿へご出発のお時刻です」


ナフテラさんが頭を下げた
私をマリア様と呼んでいる時点で気が付いてはいた
儀式が完了してないとしても彼女の中ではもう私はメンフィスの妃なのだ


「マリア様・・・わたしは父王ネフェルマアト王よりお仕えし、メンフィス様をお育てしてきました」

『ナフテラさん』

「どうか どうか、メンフィス様のお力になる・・・ よいお妃に・・・お幸せを・・・・・」


私は泣いているナフテラさんを抱きしめた


「・・・わ わたしは召し使いです」

『ナフテラさん・・・ 私が宮殿に来た時からあなたは優しくしてくれたわ。あなたとキョロルにはたくさん支えられてきた。あなた達には感謝しかないのよ・・・・だから私はあなた達のいるエジプトがいい国となるようメンフィスの妃として努力していくわ』

「おお、召し使いのこんなわたしに・・・あなたのおんためならわたしはどんなことでもいたしますよ」

「わ わたしたちも、マリア様!」

『・・・・・みんな・・・ ありがとう・・・・・』



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