▼ 036
曲者を殺したルカはマリアに駆け寄る
「イシスの娘お怪我は!?お怪我はありませんか!?」
今度こそダメかと思った・・・・・
メンフィスを救うこともできないで・・・・・
ルカがいなかったら私は───
『ルカ・・・ルカ・・・ありがとうッ・・・・本当にッ・・・あなたがいなかったらッ』
悲鳴を聞いたメンフィスが部屋に駆け込んでくる
「マリア無事かッ!!マリア!!」
『メンフィスッ』
「怪我は!!」
メンフィスはマリアを抱きしめる
『ルカが助けてくれたのよッ・・・ルカがいなかったらッ』
マリアの言葉を聞いたメンフィスはルカに礼を行った
「礼を言うぞルカ。よくぞ守ってくれた」
「い、いいえ・・・無我夢中でございましたメンフィス様・・・」
「うむ・・・これは下エジプトの者・・・・」
「ま、まさかアイシス様の下エジプトの神殿の者では?」
曲者を見ていたイムホテップとミヌーエの言葉にメンフィスは固まりそして怒った
「だまれっ!滅多なことを申すなっ!!許さぬぞ!!!!姉上がマリアの命を狙うなどそのようなことするはずがない!!」
メンフィスはただ1人の血縁者である姉を信じていた
自分をずっと愛してくれた姉が自分の愛するマリアを殺そうとする訳がないと・・・・
「どのように怒ろうとそのような愚かな行為をする姉上ではない!私の姉上を侮辱することは許さぬ!!暗殺者を厳しく詮議いたせ!!!」
「は・・・まことにご無礼を・・・・・・」
イムホテップ達はメンフィスのアイシスを信じる心に従うしかなかった
『・・・・・・・・・・』
メンフィス・・・・・
メンフィスは信じているのね
ただひとりの姉だから
アイシスはメンフィスにだけはいい姉なのね・・・・
だったら・・・・・・
だったら私はメンフィスに何も言う事は出来ないわ・・・・・
「あぁッ、でもそなたが無事で良かったッマリアッ」
メンフィスはマリアを強く抱きしめる
『メンフィス・・・』
「しかし暗殺者はなぜ私を狙わぬ!なぜ罪なきそなたを狙うのだ!!殺すならば私を殺せ!!なぜ抵抗できぬそなたを狙うのだ!!そなたにもしものことがあれば私はッ・・・私はッ・・・」
メンフィスが震えている───
私を思って・・・私が死ぬことを恐れて・・・・
あぁ・・・私は愛されている・・・
私が愛している何倍も深く激しく
愛されている───
あなたのたぎる胸の鼓動が私の体に伝わって
恐れも不安も消し去ってくれる・・・
メンフィス・・・
愛しているわ・・・あなたを
イズミル王子はなにをしておられるのだ!
とっくにアラビア砂漠を超えられたはず。遅すぎる!
いっそイシスの娘をこの背に背負い馬でしの砂漠を駆け抜けるか!
廊下を歩くルカは気づかなかった自分の背中をイムホテップが見ていたことに
「これは深く・・・詮議せねばならぬ・・・」
賊といい、賊を殺害したルカの手並みはまことに鮮やかすぎる
一人は心の臓に、一人は喉元に・・・
これは並みの腕ではない。ルカというあの男・・・
「イシスの娘を奪うことも殺すことにも失敗した!」
「もはや日もなく王との婚儀を阻むこともできぬ!!」
「いけ!アイシス様にこの旨をお伝えせよ!!」
下エジプトの兵はアイシスに向けて鳥を放つのだった
prev / next