▼ 035
「マリア。メンフィス王のご命令でお迎えにあがりました。宮殿へお帰り下さい」
『ミヌーエ将軍』
子供たちはミヌーエ将軍に会えて嬉しいのかミヌーエ将軍に駆け寄っていた
「わー!ミヌーエ将軍だ!!」
「将軍だ!!」
「輿をこれへ!!」
「はっ!!」
兵士に命令したミヌーエ将軍を私は止めた
『待って下さい。私輿には乗りませんわ』
「マリアなりません。王が心配されます」
『ミヌーエ将軍。輿に乗った方がいいことはわかっています。ですが少しでも民の皆さんと同じ視点で物事を見たいのです。私はメンフィスの妻に・・・エジプトの王妃になると決めました。これからエジプトをより栄させるためにも私は王族が貴族が当たり前だと思うことを当たり前だと思って過ごしたくないのです』
「・・・・・わかりました。ですがもし何かあればすぐに輿に乗っていただきます」
『えぇ。それで構いません。ありがとうございます・・・キャロル宮殿まで一緒に歩きましょう?』
「え?・・・えぇ!」
『?』
マリアと兵に守られるようにしながらキャロルと宮殿までの道のりを民に祝福されながら歩いて行く
そんなマリアの姿をメンフィスは宮殿から見ていた
「なんと喜ばしいことだ。民の心がこのように一つになったとは────」
「──────諸外国の使者たちがこの様子を見ればエジプトはご結婚によりますます強国になったとそれぞれの国へ帰り報告するでしょう」
家臣たちは黙ったままのメンフィスに口々にいう
「・・・・・・・」
「メンフィス様。これこそ我らが望んでいたものですぞ」
メンフィスはイムホテップの言葉に自分がマリアを妻とすることが間違いでなかったと改めて感じた
「心からお祝い申し上げるメンフィス王。ただひとつ気がかりなのはアイシス様のこと・・・」
「いやいやイムホテップ。姉上とてエジプトを守ることにおいては心は一つだ」
「うむ。さようでございますな」
亡き父上がおいでの時から兄弟力を合わせてきた
「今は仲違いしていようとも聡明な姉上だ、今にきっとわかってくれる」
その言葉を聞きイムホテップ達はメンフィスから離れながらメンフィス王の言う通りだと話しながら去っていくのだった
『メンフィス?』
「マリア!!」
メンフィスは帰って来たマリアに駆け寄る
「マリア!何処に行っていたのだ!!」
『ごめんなさい・・・ただ、あなたが治める国を見たかったのよ。あなたの妻となる私があなたの国のことを知らないのはダメな気がして』
メンフィスは勝手に外に出たマリアに怒っていたがマリアが自分の治める国を見たかった・・・自分のために行った・・・
「そうだったのか!ならば良い。だが次外に出るときは私と共にだ」
メンフィスはよほど嬉しかったのか怒りを鎮めるのだった
夜
遅い!イズミル王子はなにをしておられる!なぜ連絡がないのだ!!なぜに・・・・・
ルカは木の陰に隠れイズミルからの連絡を待っていた───
「うーむ。さっきの国民の熱狂ぶりを見たか・・・」
「アルゴン様!」
「是が非でもあの娘を近くで見たい」
「い、いけませぬアルゴン様!」
「そちらは女たちの宮殿です!エジプト兵に見つかっては!!」
「うるさい!女のところに忍び込むの離れておるわ!!」
アルゴンは静かに見つからぬように忍び込む
その頃マリアはお風呂に入っていた
バシャーンッ
フギャーッフギャーッ
お風呂に落ちて来たものを抱き上げてみるとそれは・・・
『猫・・・?』
「まぁまぁ!落ちたのですね」
ナフテラがマリアから猫を受け取り毛を拭いてやる
「メンフィス様がマリアの慰めになるだろうとおっしゃられて、今日、農地の見回りに出かけられた時捕らえてお帰りになったのですよ」
『メンフィスが』
風呂から上がったマリアは猫を抱えて部屋への道を歩く
白い毛に青い瞳の猫は大人しく私に抱かれている
ヒッタイトにいた時はペットなんて飼ってなかったけどその前───日本人として生きてた時には実家で猫を飼ってたっけ
やっぱり可愛い
『ふふ』
「アルゴン様部屋へお戻りを!見つかっては一大事です!!」
「しっ!黙れ!!」
あれがイシスの娘・・・・
髪が金色だ
なんと不思議な・・・・・はじめてみたぞ
それに透けるような白い肌
美女と集めて名高いエジプトの宮廷で王の心を射止めた娘!!
な、なんと美しいのだ
あれ程までに美しい女は見たことがないぞ!!
「さ、早くお帰りを!!」
「なんだ!!」
部下がアルゴンを連れて帰ろうとしたその時
アルゴンたちがいた茂みの横をザザザッと何かが通る
「捕らえろ!さもなくば殺せ!!」
『!!!』
部屋に戻ったマリアを男たちが襲ってくる
水をと思ったけどこの部屋には今水を含んでいるものがないことに気がついた時には既に捕まってしまっていた
『きゃーーーっ!ナフテラ!!』
私の悲鳴を聞いたナフテラが部屋に入ってくる
「あーーっ!曲者!であえ!であえーーっ!!」
「チッ」
「イシスの娘を殺せ!!」
『きゃあッ!誰か助けてッ!!』
ルカがナイフを持って部屋に入ってきて曲者を全て見事な身のこなしであっという間に殺してしまった
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