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「メンフィス様!!」
「メンフィス王が帰られたぞ!!」
メンフィスを船で待っていたミヌーエやウナス、キャロル達がメンフィスに駆け寄った
「ミヌーエ直ぐに医師を連れてまいれ!!!」
「医師をです──────!?」
ミヌーエはようやくメンフィスに抱えられたマリアに気がついた
「早くせぬか!!!」
「・・・・・た、只今ッ」
ミヌーエが走り去ったミヌーエにかわりキャロルがメンフィス達に駆け寄り顔色が尋常ではない程に悪く荒い息をしているマリアを見て目を見開いた
「マリアッ!!どうしたのマリアッ・・・マリアッ!!」
いつもなら優しい笑顔で自分に返事をしてくれるのにどうして返事をしてくれないの?!とキャロルは泣きそうになりながらメンフィスの腕に抱えられたマリアを起こすために揺らそうとしたがそれはウナスに止められた
「マリアッ」
「キャロル!動かしてはいけませんッ」
「嫌よ!マリア起きて私よ、キャロルよ!!」
ウナスがマリアにしがみついたキャロルを引き離すと医師を呼んできたミヌーエがやってきて医師はメンフィスのもとへ駆け寄った
「メンフィス王イシスの娘をこちらにッ」
メンフィスはマリアを医師に言われた通りうつ伏せになるようベッドに寝かせた
「どうだッ・・・マリアは助かるかッ」
「・・・・・難しいところです・・・致命傷にはなっておりませんが出血が多い」
「ッ───」
「止血は出来ましたが後はイシスの娘次第でしょう・・・・・」
そう言って医師が部屋を出ていくと部屋にはベッドに寝ているマリアと
マリアの手を握りながら名前を呼ぶメンフィスだけになった
「マリアッ」
その後・・・マリアを傷つけられ落ち込んでいたメンフィスであったがイズミルへの恨みを晴らすため鬼神の如くヒッタイトを攻め海岸の城を落としたことによりイシスの娘を巡って起きた古代戦争は幕を閉じたのであった・・・
メンフィス達がエジプトに戻ってきて1週間
マリアは目を覚まさぬまま眠り続けている───
民たち最初はマリア達がエジプトに無事戻ってきたことに歓喜していたがマリアが目を覚まさないことを聞き神殿に祈りにいく日々を送っていた
メンフィスも毎日慣れないながらも必死に看病をしたが#名前は目を覚まさない
寝ることなく看病をしていたメンフィスを流石に心配に思ったナフテラやイムホテップに休むように言われたためメンフィスは渋々自室に向かっていが姉であるアイシスの部屋の前を通るメンフィスの耳に聞きたくなかった言葉が入ってしまった───
「マリアはまだ気づかぬか」
「はい。もう幾日になりましょうか。これ以上昏睡が続けば・・・もう体力持ちません。あの様子ではおそらく・・・」
「ほほほ・・・では、マリアが死ぬのは時間の問題じゃな」
アイシスとアリの会話を聞いたメンフィスは怒りで体を震わせながら部屋の半開きになっていた扉を開けるとガチャリとなった音に気がついたアイシスは振り返って後悔をした
「だ、だれじゃッ─────────あ、メンフィスッ!!」
「姉上・・・・もう今日を限りに姉上とは会いたくない!!姉とも弟とも思わぬ!!」
「メンフィス!!」
アイシスが呼び止めるがメンフィスは部屋から走り去った
アイシスの部屋を去ったメンフィスは自室には戻らずマリアの部屋へ戻ってきた
そこにはナフテラはおらず代わりにイムホテップがいた
「イムホテップ、マリア#の様子は?意識は取り戻したか!?」
「いえ、まだ気がつきません」
メンフィスはアイシスとアリの会話を思い出した
「マリアはまだ気づかぬか」
「はい。もう幾日になりましょうか。これ以上昏睡が続けば・・・もう体力持ちません。あの様子ではおそらく・・・」
「ほほほ・・・では、マリアが死ぬのは時間の問題じゃな」
「いいや、死なせはせぬッ・・・・・死なせはせぬぞ!!」
メンフィスはマリアを抱き抱えた
「私にことわりもなく死ぬなど許さん!!」
「王!!」
「メンフィス王何をなされる!!」
「乱心なされたか!!」
イムホテップ達は降ろすように言ったがメンフィスはマリアを抱え走りだした
「死ぬなど許さん!!死ぬなど許さぬぞマリア!!」
メンフィスはナイルへ向かっていた
「マリア決して死ぬことなど許しはせぬぞ!!そなたはこの私、エジプト王メンフィスのものだッ、黄金に輝く髪も、白い肌も、柔らかい唇も、青く美しい瞳も・・全て私のものだッ」
ナイル川へたどり着いたメンフィスはナイルの水をマリアに飲ませた
気づけ
気づいてくれ
死なせはせぬぞッ
マリアッ!!
メンフィスがナイルの水を飲ませてしばらくして
メンフィスの願いが通じたのか・・・はたまたナイルの水のおかげか・・・・
マリアはゆっくりと目を開けた・・・・・・
「!!・・・・・・マリアッ」
メンフィス・・・・泣いてるの?
泣かないで・・・・・
『メ・・・ンフィ、ス・・・』
「マリアッ!!おお神よッ」
メンフィスを追いかけてきたイムホテップやミヌーエたちもその奇跡に歓喜した
『メンフィス・・・貴方の私を呼ぶ声が聞こえたのよ・・・いつも、いつも、私を呼ぶ貴方の声が・・・・』
毎日私を呼ぶ声が聞こえた
ずっと、ずっと・・・・・ずっと・・・・・
ねぇメンフィス・・・・・
『・・・・・・・・私、貴方を愛しているの・・・貴方を・・・』
メンフィスはマリアを強く抱きしめた
「私もそなたを愛している・・・もう何処へも行ってはならぬ・・・よいな・・・・これは命令だ」
『・・・えぇ・・・メンフィス・・・私は貴方の側にいるわ・・・・愛しい貴方の側に・・・・』
はるかな古代エジプトのなか・・・・
今、ナイルに日が昇る・・・・・・・
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