▼ 023
「イシスの娘・・・いやマリア・・・」
気絶している名前を愛おしそうにイズミルは撫でた
「まさか、そなたがイシスの娘だったとは・・・」
『ん・・・』
「気がついたか・・・ここは私の寝室だ」
『お願いイズミル王子!!私をエジプトに帰して!!』
「そなたはエジプトには帰さね!!」
そう言ってイズミル王子は私をベッドに押し付けた
イズミル王子は私に覆い被さって私の肩に顔を埋めながら言う
「そなたはエジプトには帰さぬ・・・」
『イズミル王子放して・・・背中が・・・』
「マリア・・・私は・・・私はそなたを・・・」
ガシャン!!という音にイズミル王子は私の肩から顔を離し起き上がった
下に落ちてしまった薬を持ってきてくれたのかそこにはミラと呼ばれていた人がいた
「ミラか・・・」
「あ、私・・・・すみません!!」
『待っ・・・・て・・・!』
「無茶をするでない」
『っ・・・・・離して!!』
ミラを呼び止めようと起きあがろうとするが背中の痛みで動けない私をイズミル王子が支えてくれたけど私はそれが嫌でイズミル王子の胸を押して離れた
そんな私にイズミル王子は悲しそうな顔をした
どこか彼に似たイズミルのそんな顔に私は胸が締め付けられた
でも王子は彼ではない
面影はあっても彼ではないのだ・・・・・
「そんなに私が嫌いか・・・」
『ッ・・・・・』
「そうか・・・・・ここから出ることは許さない。大人しくしているんだな」
黙っている私にイズミル王子はそう言って部屋から出ていった
『ッ・・・・・・・』
イズミル王子のベッドに横にはなりたくなくて背中はいたんだけど膝に顔を埋めて私は泣いた
『メンフィスッ・・・助けて・・・ここにはいたくないのッ』
ガバッりメンフィスは飛び起きた
「マリアが呼んだ・・・!!」
空耳か・・・
##NAME1##が背中から血を流している夢を見た・・・
「メンフィス王!メンフィス王!!起きておいでですか!?」
ミヌーエとイムホテップが慌てた様子でメンフィスの寝室に入ってきた
「ミヌーエ、そんなに慌ててどうしたというのだ・・・」
「ヒッタイトに潜入していた者からの知らせでヒッタイトの王子・・・イズミルがエジプトから帰ってきた時に金色の髪に青い瞳の女を連れ帰ったそうです!!」
「なに!?ではやはりヒッタイトに連れ去られていたのかッ」
「そのようです・・・!!」
「だが何故だ!!和平を結んでいるヒッタイトの王子が敵対行為をする!!」
「真相は間者が調べております!!」
「マリアッ・・・」
「メンフィス王」
「イムホテップ・・・」
「マリアはエジプトにとって無くてはならない存在です。いずれは王妃となりこの国の母となる神聖なるイシスの娘なのです」
「あぁそうだ・・・なんとしてでもマリアを連れ戻さねばならぬ!!」
「メンフィス王、私は戦になったとしても仕方がないことだと思っております。そしてこれは全ての人民の意思でもあるのです」
「イムホテップ・・・そうだ・・・マリアは人民にとっても無くてはならない存在・・・ミヌーエ密かに戦の準備をせよ」
「はい」
「ヒッタイトとは和平の条約を結んでからは友好関係を保っていたがこのメンフィスの王妃となる娘であるマリアを連れ去った!!これ以上の侮辱はない!!こうなれば戦も辞さない!!なんとしてでも神聖なるイシスの娘であるマリアを連れ戻す!!」
メンフィスの言葉にイムホテップとミヌーエは頷いた
アイシスはメンフィスへ駆け寄った
「メンフィス!!」
「姉上」
「戦をするなどなりません!!ヒッタイトは戦に強い民族!!イズミル王子は並びなき武術の達人と聞きました!!」
「話を聞いていたのですかッ」
「えぇ!!聞いていました!!戦をするなど私は許しません!!マリアの事は諦めるのです!!マリアはイズミルに略奪されました!!略奪された者はその相手のものになるのが掟です!!」
「掟など関係ありません!!これは人民の意思でもあるのです!!」
「何故王はイシスの娘を助けない!!」
「イシスの娘を助けろ!」
「イシスの娘を助けろ!!」
「エジプトに悪いことが起こるぞ!」
「悪いことが起こるぞ!!」
人民の声が宮殿に響き渡る・・・
「イシスの娘を助けろ!!」
「我がエジプトの母なるイシスの娘!!」
「イシスの娘は我がエジプトの守り神だ!!」
「我々のイシスの娘を助けろ!!」
「イシスの娘を助けろ!!」
「メンフィス!!どうかお願いだからマリアのことは忘れて無用な戦などしないでちょうだいッ・・・」
「姉上!!」
「マリアはイシスの娘などではありません!!マリアなど掟にのっとりイズミル王子にくれてやればいいのです!!貴方には幼き日から私がいたではありませんか!!」
「姉上なにを言う!!マリアはイシスの娘だ!!エジプト王の私の妃に相応しい娘だと民も認めている!!」
「でも私はどうなるのです!!私は貴方の妃になると信じて子供の頃から育ってきたのよッ・・・貴方がマリアを知るはるか昔から・・・私は愛してきたのです!!」
「姉上!!」
「貴方だけを・・・貴方だけを・・・」
メンフィスは縋り付くアイシスを引き離した
「許せ・・・姉上・・・」
「おおメンフィス」
「私はマリアを愛しているッ」
ーーーこれは運命かもしれぬ・・・
マリアしか妃に望まぬ!!
これはエジプトの民の望みでもある!!
マリアが私を呼ぶ声が聞こえる!!
今頃ヒッタイトでどのような目にあわされていることか・・・!!
「おのれ憎っくきイズミル王子!!どうしてくれよう!!和平を結びながら条約を破ったヒッタイト!!思い知らせてやるぞ!!イムホテップ軍船の準備をしろ!!」
「もうナイルの河口に集結させてあります」
「ミヌーエ軍備はッ」
「ヒッタイトに知られぬよう密かに整えました」
マリア
マリア
必ず助けてやるぞ・・・!!
「メンフィス王!!ヒッタイトに潜入していた者からの書状です!!」
「なにっ」
ヒッタイトではまだ我が国の動きに気づいておりません・・・
ですがヒッタイトの国王や王妃を始め大臣の中でもマリア様を気に入り始めたものも多く・・・・・
「特にイズミル王子はマリアの人柄、生まれの神秘・・・聡明さに興味を持ちマリアを宮殿の奥深くに監禁し容易に近づけぬ・・・イズミル王子はマリアを妻にと望んでいる様子ッ・・・」
メンフィスは書状を握りつぶした
「くそうっ・・・そうはさせぬッ・・・そうはさせぬぞ!イズミル王子!!ナイル河口に集結!!なんとしてでもイズミルからマリアを奪い返すんだッ・・・マリアは私の未来の妃だ!!誰にも渡さんッ・・・私のものだマリア!!」
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