▼ 022
そのころー
地中海を隔てた対岸・・・ヒッタイト王国では・・・
「イズミル王子!!」
「イズミル王子のお帰りだ!!」
「陛下がお待ちでございます」
あぁ・・・とうとうヒッタイトに着いてしまったわ・・・
私はどうすればいいの・・・
我が故郷ヒッタイト・・・なんて、なんて懐かしいの・・・
でも、心が苦しい・・・
大好きだったヒッタイトが今ではつらい場所のように感じる・・・
私は・・・私はもうヒッタイトにいていい人間ではないわ・・・
背中の痛みにふらつくと帰国を歓迎されていたはずのイズミル王子が支えてくれた
『助けなどいりません!』
「これはまた強情な娘・・・その元気いつまで持つかな。足がふらついて歩けぬではないか」
「イズミル王子様!!お帰りなさいませイズミル王子」
「おおミラ父や母は」
「えぇ、王も王妃様もお待ちですわ。ーーーーーこの娘は・・・」
「私がエジプトから連れてきた娘だ」
「エジプト娘・・・」
「エジプト娘・・・」
「なにっイズミル!!ミタムン王女は殺されたらしいと!!」
ヒッタイト王の声が広間に響き渡った
「父上・・・おそらく牢の中どこかで密かに殺されたらしく・・・引き続き調べさせておりますが未だ真相は掴めません」
「おお、ミタムンの額飾り!!あぁ・・・これには血が付いているわ・・・どんな死に方をしたのでしょう・・・ミタムン、ミタムン・・・」
「母上どうかしっかりしてください!!」
泣き崩れるヒッタイトの王妃にミタムンの無事を知っている私まで胸が苦しくなった
ああ・・・私がもし彼女の立場だったら娘のことを思い泣き崩れてしまうかもしれない・・・と
「エジプト王メンフィスよ・・・そなたを恋したミタムンをどのような手段で殺したのか・・・」
「あぁ・・・!!」
「母上、母上・・・」
「そうじゃ、宮殿にいたというその娘きっと真相を知っておろう。殺しても良い。拷問し・・・白状させい!!」
ヒッタイト王の言葉に私の体は強張った
まさかまた船の時みたいに鞭を・・・・・いや今度はもっと酷い拷問かもしれないと
「お待ちください父上・・・この娘は私の手で拷問しました」
助けてくれたイズミル王子には申し訳ないけど私は賭けに出ることにした
母やである彼女なら信じてくれるかもしれないと
『お待ちください!!ミタムンは生きています!!本当です!!嘘ではありません!!』
「まだ言うか!!」
『ならエジプトに手紙を送ればいいわ!!本当のことだもの!!』
イズミル王子はやはり信じて悪れなかったけどやはり母親である彼女は違った
「ミタムンが生きているというのは本当ですか!?」
「母上!!」
嘘に決まってますと言うイズミル王子の言葉に被せて私は言った
『本当です!!ヒッタイトの主神であるテシュプに誓って!!嘘偽りはもうしておりません!!』
その時マリアの傷口が開き血が床に落ちた
「そなた出血しているではないか!!」
『イズミル王子本当よ・・・ミタムンは生きているわ・・・お願い信じて・・・!!』
「すぐに手当を・・・」
お願いよ信じて・・・そして私をエジプトへ帰して・・・
「イズミル王子只今帰ってまいりました」
「お、そなたは・・・」
「やっと牢を抜け出しエジプトを脱出してまいりました!!」
イズミル王子の肩の辺りから見えた顔に私は驚いた
どうしてどうしてあの人がヒッタイトに!!
エジプトで捕まっていたはずなのに!!
「あ、イシスの娘!!」
「なにっ!?この者がイシスの娘だと!!」
『あ、貴方・・・』
「イズミル王子その娘は鉄の工法を知っており汚れた水を清水に変え、コブラに噛まれたメンフィス王を不思議な力で救い怪我をしたミタムン王女をも救った娘です!!誠に得がたい娘です!!あのエジプトの知恵と呼ばれる宰相のイムホテップがいたく気に入り王家の妃にと望みまた、メンフィス王の寵愛を受ける娘です!!」
「では・・・ミタムンは生きているのか!?」
「はい王様!!残念ながらミタムン王女と脱出することはできませんでしたが・・・」
「あぁ・・・よかった・・・」
王妃が嬉し泣きをしている
でもこの状況はまずいとしか言いようがない
「そなたが誠のイシスの娘だったのだな」
『違うわ!!私はただのマリアよ!!イシスの娘ではないわ!!』
「マリア・・・」
『あ・・・・・』
名前を言ってしまった
ここヒッタイトで
やっぱり私の考えは正しかったのか至る所からざわめきが起こった
ムルシリ2世陛下の正妃マリア様の名と同じ名前ーーーーーーと
「そなたわ」
『近寄らないで!!!』
私に触れようとしたイズミル王子の手を叩き落とす
「私の南の宮殿へ運べ、手当を・・・」
『手当てなんかいらないわ!!ミタムンが無事だということは分かったでしょう!?お願いだから私をエジプトに帰して!!』
ドスッとイズミルはマリアを気絶させ兵士に自室へ連れて行くよう命令した
「イズミル王子様あの娘をどうなさるおつもりですか」
「ミラ、母の世話を頼むよ」
イズミルは近くにいたミラに声をかけ父である国王の元へ向かう
「イズミル・・・マリア王妃と同じ名を持つあの娘はまっすぐな瞳を持っている良い娘だ・・・・・誠、女神の娘やもしれぬ」
「父上・・・」
「どうしたイズミル」
「私はマリアを我が妻に迎えたいと思います・・・どうか、お許しいただけませんか・・・」
「あの娘をか・・・」
「はい」
イズミルはまっすぐと国王を見つめた
「・・・・・・いいだろう。聖妃と呼ばれたマリア王妃と同じ名を持つ娘。そこら辺の姫などよりはあの娘の方が賢く民にも好かれる王妃となるであろう」
「ありがとうございます父上」
それに衝撃を受けたのは王妃に可愛がってもらいそしてイズミルのことを愛しているミラだった
そんな・・・イズミル王子様があの娘を妻に迎えるだなんて!!
・・・・・いいわ
なんとしてでも阻止してみせるわ!!イズミル王子様は誰にも渡さない!!
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