▼ 021
『はっ…』
目を覚ますと私の背中をイズミル王子が手当てしていた
「動くな」
私最近意識失ってばっかりだわ・・・
「エジプトにはそなたと同じ並み外れて美しい金色の髪と抜けるような白い肌をもつイシスの娘がいるがその者よりもそなたの方が美しいと思うがメンフィス王はそなたではなくイシスの娘を選んだのだな」
『え?』
「やはりメンフィス王は、不思議な力を持っておりイシスより生まれし娘の方が良かったのだな」
『まって。イシスの娘は・・・不思議な力を持っていてメンフィスに熱愛されているの?』
「そうだ・・・イシスの娘がいたせいで我が妹ミタムンは・・・!!」
イズミル王子が言っているイシスの娘ってもしかして私のこと?
私以外にエジプトに不思議な力を持っている人はいないはずだもの・・・
「イズミル王子!!イズミル王子!!ヒッタイトが見えて参りました」
「よし、すぐ行く」
「ヒッタイトだ!!」
「ヒッタイトだ!!」
あぁ・・・まだ背中が焼けるように痛い・・・
それにもうすぐヒッタイトへ着いてしまう…
あぁ・・・メンフィス・・・
お願いよメンフィス・・・私を助けて・・・!!
ガシャーン!!
「くそうっ!砂漠で見失ったまま未だに奴らの行方が掴めぬ!!マリアを何処へ連れ去ったのか・・・!!ミヌーエまだ手がかりは掴めぬのか!?国境は封鎖したか!?砂漠の捜索隊から知らせはないか!?」
「はい!!まだいずれもございません!!」
「イシスの娘を狙ったのだろう」
「何者だろう」
「・・・・・メンフィス王彼らはすでに国外へ出たと思われますぞ。あの手際只者ではありません」
「ではやはりエジプト王の私に恨みをもつ外国人の仕業か!!」
「メンフィス王!!メンフィス王!!」
「なんだ」
「今、東門にこれがありました!!!」
「おお!!これはマリアの肩絹!!」
しかし肩絹には赤黒いもの・・・・・
メンフィスは見慣れているが誰のかは信じたくないものがついていた
「血!?」
マリアの血だ・・・マリア・・・!!
マリア・・・もしや・・・!!
最悪ことを考えたメンフィスにイムホテップは安心するように言った
「いや王案じられるな。殺しならばさらいはしませぬ」
「だが・・・危害を加えられている・・・」
マリアが血を流している・・・!!
「私に対する恨みがあるならなぜ私を狙わぬ!!マリアに罪はない!!なぜ私を狙わぬ!!」
「王ごらんなされ包み布・・・これはヒッタイト織物では?」
「なに!?」
「ヒッタイト!?」
「ではマリアはヒッタイト人に!?」
「いや、そうではあるまい。ヒッタイトと我がエジプトは友好関係を結んでいる」
「王・・・考えられることかもしれませぬ・・・ヒッタイトに潜ませている間者に指令を出し密かに真相を探れ。また、ヌビア、リビア、バビロニア、シリア近間の国々をも密かに調査せよ。いずれの人間にせよ我がエジプトのイシス女神の娘を連れ去るとは・・・我がエジプトに対する侮辱です」
「そうだ!!」
「だがなぜだイムホテップ!!原因が掴めぬ!!」
その話を聞いていたナフテラはミタムン王女のことではと進言しようとしたがアイシスに止められた
「ナフテラ女官長!余計なことは喋らぬ方が良いぞ」
「あ、アイシス様・・・」
「母上・・・顔色が悪いが・・・・・」
「あ、いいえミヌーエ何でもありませんよ・・・!」
戦も恐れぬ!!死も恐れぬ!!私はエジプトの王!!
だがマリアが血を流し苦しんでいると思うだけでなぜこんなに胸が苦しい・・・
なぜ・・・
心が乱れて国事に身が入らぬ
・・・・・・愚かな!!
「申し上げますメンフィス王。シリアの王侯たちが例年の貢物を持って今到着いたしました。謁見の間へ」
「よし!!」
謁見のために正装の支度をするメンフィスにアイシスは言った
「シリア隙あらばこそエジプトを狙っている国の一つ・・・シリアかもしれぬ・・・」
「ねぇメンフィス・・・昔から略奪されたものは娘はその男のものになるのが運命。マリアとて運命は免れぬ・・・どこの国の生まれのものとも知れねマリアなど忘れて・・・」
「マリアはイシス女神の娘!!いかに姉上といえどそれ以上言うことは許さぬ!!」
「メンフィス!!」
「謁見する!!イムホテップ、シリアの王侯を通せ」
「メンフィス!!」
メンフィスの心はアイシスからどんどん離れていく・・・
そして街でもイシスの娘が連れ去られたと噂になっていた
「イシスの娘が何者かに連れ去られたそうだ!!」
「なに!?」
「そりゃあ本当かい?」
「イシス女神の娘が・・・」
「噂ではヒッタイト人らしいとか」
「いや砂漠のリビア人ではないか」
「我がエジプト・・・イシス女神・・・その娘を奪われてこのままでいいのか!?」
「何者だろう」
「エジプトに悪いことが起こらねばいいが」
prev / next