▼ 013
「メンフィス様だ!!」
「メンフィス王!!」
「金色の髪の娘もいるぞ!!」
「イムホテップマリアが生きていたぞ!!」
「これは・・・喜ばしいことですなメンフィス王」
宮殿へ着いてもメンフィスは私を離さないままイムホテップと会話をしていた
「ナフテラ女官長!!」
「は、メンフィス様」
『メンフィス・・・』
「マリアそなたは決して放しはしない」
「さ、行きましょう」
ナフテラさんに連れられて部屋へ行くとそこにはキャロルさんがいた
「マリア!!」
『キャロルさん・・・』
「無事でよかった!!でもここにいたらダメだわ」
『キャロルさん・・・私・・・逃げるのはやめるわ・・・』
「マリア!?」
『メンフィスを愛することはないけれど・・・逃げるのはやめるわ・・・もう、疲れてしまったの・・・』
「諦めてはだめよ!!」
『何度逃げてもメンフィスに見つかって失敗するじゃない!!』
「マリア・・・」
『もちろんキャロルさんのことは現代へ帰してあげたいから協力するわ。でも私はもう逃げない・・・逃げないでエジプトで誰にも束縛されず生きていくわ』
「マリアう、後ろ・・・」
急に顔を青くさせたキャロルさんが私の後ろを指さしながら震えた
『え?後ろ?』
後ろを振り向くとそこにはメンフィスがいた
私たちの話をメンフィスは聞いていたのだ
『あ・・・め、メンフィス・・・』
「そこまで私を嫌うか、マリア!!」
「メンフィス今のは!!」
キャロルさんが弁明をしようとしたけだメンフィスがそれを聞くことはなく
「うるさい!だまれキャロル!!ええい、腹の立つ!!囚人どもの牢へ放り込んでやる!!」
そう言って私だけでなくキャロルの腕も掴みメンフィスは私たちを牢へ連れていく
「昼は囚人どもと同じように苦役につかせろ!!」
そしてメンフィスは本当に私たちを牢屋に閉じ込め出ていってしまった
『「キャア!!」』
「そんなメンフィス王!!」
「男でも一月ともたぬ恐ろしいところに!!」
ナフテラとミヌーエの言葉には耳も貸さず
「かまわぬ!!ここなら逃げられまい!!その白いが切れ白い膚が泥にまみれ砂漠の熱風の苦しさにのたうちまわればよい!!どうしても助けて欲しくば私の前に跪き許しを乞えば許してやる!!」
「王!!」
ドアの前でそういうと去っていってしまった
「さあ、イムホテップ書状がきていたな」
「は・・・ヌビアよりヒッタイトに不穏な動きが見えるとの報告です」
「ミヌーエ皆を集めよ協議する」
「はい」
「メンフィス王!!」
「メンフィスがとうとう本性を現したわ。残虐な王メンフィス。弱音は吐いてはだめよマリア。貴女は私が支えるわ」
『キャロルさん・・・でも私のせいで・・・』
「マリアのせいじゃないわきっとメンフィスは私たちの会話を最初から聞いていたはずよ。だから私も悪いの
キャロルさんはいつも優しいーーーーーまるで本当にユーリさんと話しているみたいに安心する
「それにしても・・・・・ここ」
『ええ。真っ暗ですね・・・』
「マリア奥に行ってみましょう」
『ええ、キャロルさん・・・きゃっ!』
真っ暗で足元に石段があることに気が付かなかった私が転びそうになったその時
誰かが支えてくれた
「危ない!石段です!!」
「マリア大丈夫!?」
『大丈夫。助けてくださりありがとうございます・・・えっと』
「ぼくはウナスって言います」
『ありがとうございますウナスさん』
「ウナスでいいですよ」
「ズルいわウナス!!マリア私もキャロルさんじゃなくてキャロルがいいわ!!」
そういえばユーリさんにもユーリって呼んでと言われてたっけと懐かしくそして同じことを言うキャロルさんーーーーーキャロルに涙が出そうになった
『えぇ、これからよろしくお願いしますウナス、キャロル』
キャロルは嬉しそう声を出して笑って私の手を握った
暖かい優しい手で
そんな私たちにウナスは囚人がどう過ごすのかを教えてくれた
「マリア、キャロル。囚人は昼の砂漠で泥レンガを作るんです」
「あの暑い太陽の下で!?」
「えぇ・・・だからみんなあんなに疲れきっているんです。だから2人も眠っておかないと体がもたないよ」
ウナスが言うように日中働かなければならないのなら睡眠は重要だろうし他の囚人の人たちは毎日の疲れが溜まっているはず・・・
「マリアできるだけ睡眠をとっておきましょう」
『そうね』
「絶対に弱音なんか吐かないんだから・・・!!」
そう言ってキャロルは私を先に壁側に座らせてくれた
「マリア隅へ寄ったら毒虫がいます!!」
『えっ?』
ウナスそう教えてくれた次の瞬間
私の肩に何かが落ちてきた
「マリアか、肩に!!」
『肩?』
目が暗闇に慣れてきた中でキャロルが指さす肩を見るとそこには先程ウナスが言っていたと思われる毒虫がいた
「マリアじっとしてて下さい!!」
ウナスはそう言って肩から毒虫を払い足で踏み潰してくれた
『あっ・・・ウナス、あ、ありがとうございます・・・』
「マリア大丈夫!?」
『えぇ大丈夫よ』
危なかったわ・・・ウナスさんがいなかったら・・・
皆さん疲れているのに大声を出してしまうところだったし・・・
それにしてもここには沢山毒虫がいるのね・・・
気にしてしまって寝られないわ・・・
「さあ、マリア、キャロルここへ」
『でも、ウナスが寝るところが・・・』
「僕は平気です。なれてます。さあ眠って!!」
ウナスはとても親切だった
なんでそこまで?と少し不思議に思えるほどに
『ウナス・・・ありがとうございます・・・』
「ごめんね・・・」
「さあ、2人とも早く眠って!!」
早く眠って明日に備えなくちゃ・・・
「マリア」
キャロルと隣同士で横になっていると小声でキャロルに話しかけられた
『どうしたの?』
「マリア・・・貴方が助けたミタムン王女はまだ療養中よ。でもマリアが行方不明の間に火傷はだいぶ治ったわとナフテラが言っていたわ」
ミタムン王女良くなってよかったわ
火傷の痕が残りそうなら消してあげないと
「ここを無事に出られるようになったらあってあげて」
『えぇ・・・』
その頃メンフィスは荒れていた・・・
どうして私の気持ちを受け入れぬのだ・・・くそう・・・
苦しめ!!その白い体を泥にまみれて苦しむがよい!!
焼け付く砂漠でのたうちまわるが良い!!
愛している・・・愛している・・・
なぜ、私の腕に抱かれようとせぬ
なぜ私を嫌う・・・!!
お前が欲しい・・・!!
マリア・・・私のものにならぬのならいっそ死ねばよい!!
「マリアなど熱砂の砂漠で死ねばよい!!」
アイシスはその言葉に歓喜した
「おおメンフィス!!その言葉を待っていました!!愛しているわメンフィス、愛しているの・・・」
「姉上・・・」
「さあ、いらっしゃい。一緒にお酒を飲みましょう」
マリア・・・
そのころ地中海の対岸ヒッタイト王国から夜の海をひそかにエジプトに向かう1艘の船があった・・・
「イズミル王子エジプトが見えます」
「おお、エジプト・・・妹のミタムン王女が行方不明のままいまだ帰らぬ・・・聞けばメンフィス王は妹のミタムンを冷たく突き放したという。密かにエジプトに潜入し、この目で国内を探ってやろう・・・」
「もうすぐ夜明けですイズミル王子」
「エジプト王メンフィスよ・・・我が妹ミタムン王女へのそなたの扱い。いかんによってはこのイズミルが許しはせぬぞ・・・」
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