Breakfast
カーテンの隙間から朝の陽射しが差し込み、堺はゆっくりと目を覚ました。目覚まし時計を見ると、まだ7時にもなっていなかった。今日はオフで、昨夜も遅かったというのに、自然と目が覚めてしまったことに堺は一人苦笑する。このまま二度寝してしまおうかと思っていると、隣に眠っている世良がごろりと寝返りを打った。
「う……ん………。」
幸せそうに眠る、という言葉がぴったりな寝顔を浮かべる世良は、堺が起きたことにも微塵も気付いていないのだろう。
「んー………堺さぁん……無理……。」
「………どんな夢見てんだよ。」
昨夜の夢でも見ているのかと堺は呆れた口調で言い、すやすやと眠り続ける世良の前髪を掻き上げた。
このまま世良の寝顔を眺めているのも悪くないと思ったが、堺は家のことを幾つか片付けなければいけないということに気付いた。洗濯物も溜まっているし、冷蔵庫にもろくなものは入っていなくて、朝食にするものもないのではないか。
少しの躊躇いの後、熟睡する世良を残し、堺はそろりとベッドから抜け出した。
堺が洗濯機を回し、その間に朝食の買い出しに行っている頃、世良はようやく目を覚ました。まだぼんやりした視界に、淡い色のシーツが映る。そして、隣にいるはずの堺を探し、彼がいないことに気付いた。
「あ……れ?さかいさ………?」
トイレにでも行っているのだろうか、と世良は思い、上体を起こした。昨夜はアルコールが入っていない為、目覚めは悪くない。
世良が耳を澄ますと、洗濯機の回る音が聞こえた。
「堺さん………?」
もう起きているのだろうか、と世良は起き上がり、大きく伸びをした。
そして、世良がベッドから降りると、自分が全裸であることに気付いた。朝から全裸はないだろうと少し恥ずかしくなり、世良はシーツを体に巻き付け、忍び足で寝室の中を移動した。
確か二組ほど着替えは置いてあるはず、と世良はいつの間にか世良専用になってしまったカゴを覗き込んだ。しかし、カゴは空だった。
「………もしかして。」
全部洗濯してしまったのだろうか。
空のカゴを前に、世良は頭を抱えた。着替えがない限りはこのままシーツにくるまっているしかないが、いつまでもこの格好なのは動きづらいし、少し暑い。
どうしよう、と考え込む世良の視界に、出されたままの堺のシャツが目に入った。おそらくは今日堺が着る予定のシャツだろうが、世良の手は自然とそれに伸びていた。
「堺さんの……シャツ。」
シャツを自分の体に当ててみると、やはり自分の身体よりも大きかった。
「堺さん、怒らないよな。」
呟いて、それを着てみると、堺の使っている柔軟剤の香りがした。世良は自然と笑みが零れる。
「わー、堺さんの匂い……。」
まるで堺さんに抱き締められているみたい、と世良は自分の身体を抱き、楽しげに身体を揺らした。
浮かれた足取りのままリビングへ行くと、堺はいなかった。あれ、と言って世良はキッチンも覗くが、やはりそこにも堺はいない。
どこに行ったんだろう、と世良はしゅんと肩を竦ませるが、でもすぐに戻ってきてくれるはず、と思い直した。
冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出し、冷えた水を喉に流し込む。その時、冷蔵庫の上に出された個包装のバターが世良の目に入った。触れてみると、まだ少し冷たく、外に出されてからまだそんなに時間が経たないことが分かった。朝食に使おうとしていたのだろう。やっぱり堺さんは買い出しに行ったんだ、と世良は小さく呟き、大人しく彼の帰宅を待つことにした。
堺が帰宅すると、玄関のドアを開ける音を聞きつけた世良が、奥から小走りに出てきた。
「堺さんっ!おかえりなさい!」
「起きてたのか、世良……」
ただいまと言いかけて堺は固まる。
「?……どうしたんですかっ?」
パンの入った袋を抱えたまま硬直する堺を、世良は不思議そうに見返した。
世良は、先程の堺のシャツをそのまま着ていた。勿論、下着類は身に着けておらず、裸身にそれを着ているのみだ。
堺は一目見てそれが分かり、大きく溜め息をついた。
「お前な……。それは俺のだろ。」
「あっ、す、すみません!」
世良は慌てて謝る。
「で、でも、堺さんが俺の服、全部洗濯しちゃったから、俺、着るものがなくって……。」
シャツの裾を掴み、世良はおずおず堺を見上げる。
「だめでした、か?」
上目遣いにそう言われ、堺は自分の中の欲望を何とか押さえ込もうとする。
「………お前、な。狙ってんのか?」
「え?」不思議そうに顔を上げた世良の大きく開いた胸元に、昨夜自分が残した赤い跡を見つけ、堺の中の糸がぷつりと切れた。
堺はパンの袋をテーブルに置き、世良の腕を掴む。世良は驚いて目を見開いた。
「さ、堺さんっ?」
「誘ってんのかって、言ってんだよ。」
「さそっ……」
堺の言葉を理解した世良は、ぱっと顔を赤くした。
「そ、そんなことないっス!」
「馬鹿。もう遅えよ。」
「っ………!」
堺に唇を塞がれて世良は身体を固くしたが、それも一瞬のことで、すぐに身体を弛緩させた。
「んんっ……ふ…」
舌を絡ませ、互いの唇をはむように味わう。そしてまた口内を深く侵していく。
「んっ……あ……」
するりと堺の手が世良の太腿を撫で、世良は身体を震わせた。
堺は世良の筋肉質な太腿を撫であげた後、そのまま手をシャツの中へ滑り込ませて背中に回した。そして、反対の手で、シャツの上から世良の胸の辺りをゆるゆると揉んでいく。そこも勿論柔らかさはほとんどないが、世良はびくびくと反応した。
「硬くなってるぜ。」
世良の胸の突起を堺がつまむと、あっと世良は声を上げた。
「ん……それは堺さんがっ……」
「俺のせいかよ?」
意地悪く世良を見ると、世良は困ったように口を閉じ、そして、
「うっ………俺の、せいです……。」
世良の返事に、堺は小さく口元を笑みの形にゆがめる。
「そうだよな。」
「はい……っ、んんっ……」
世良は頷いて、堺にされるがままになっていた。
堺はなおもその場所を指でつまみ、押し潰すように擦りあげる。刺激したらその分だけ反応する世良が、可愛くて仕方なかった。
小さな笑みを浮かべながら堺が目線を下に移すと、世良のものが堺のシャツを押し上げていた。
「世良……。これはなんだ?」
「っ!」
シャツの上から握られ、世良は息を詰めた。しかし、世良のものは堺に触れられたことで更にシャツを押し上げた。
「っあ……さ、かいさぁんっ……!」
世良は堪えきれず、堺にすがりつく。
堺は、シャツ越しの世良のものを根元の方から握り、扱きあげた。
「んんっ……!や、あっ……」
じわり、とシャツに染みが広がる。それは世良の目にすぐ入り、世良は顔を真っ赤にした。
「っわ………す、すみませっ…!堺さんのシャツっ……!」
世良は染みの部分を慌てて手で覆い隠そうとするが、堺がそうはさせない。隠そうとした世良の手を握り、困惑した世良の顔を覗き込む。
「ほ、ほんと………すみませんっ」
「どうしてくれんだ?」
「ううっ……」
世良は泣きそうな顔になるが、堺は世良のものをぐっと扱きあげた。
「ああっ!」
世良は顔を赤くし、目を涙で潤ませていた。ふ、と小さく堺は笑い、冷蔵庫の上のバターを手に取った。
「さ、かいさ……?」
「黙ってろよ。」
堺はバターを開け、軟らかくなったバターを指に取った。
「え………っ?」
何をするのかと戸惑う世良の足を開き、堺は世良の後孔にバターを塗りこんだ。
「やっ、さ、堺さんっ!?」
世良は戸惑って堺の名を呼ぶが、堺はぐちゅりと世良の中へ指を深く入れ、中を掻き回した。
「っあああ!」
既に軟らかくなっていたバターは、世良の体温でさらさらと溶けていく。ぬるついた手で中を探られ、世良は自然と足を開き、腰を揺らした。
堺は自分の手に溶けたバターがつたうのも構わず、世良の反応を楽しみ続けた。
しかしやがて世良の方が我慢できなくなる。
「さ……堺さんっ、も、俺………っ」
熱い視線を向けられ、堺もぞくりと背中に快感が走る。
堺に懇願する世良の表情は官能的で、堺は焦らすことも出来ず衣服を脱ぎ、自らのものを取り出した。
「そこに手をつけ。」
「はい……っ」
堺は、世良にシンクに手をつかせた。堺の方へ尻を向けた世良は、熱い塊を押し付けられ、嬉しげに目を細めた。
「あ……あ………っ!」
「世良……っ!」
一気に貫かれ、世良は身体を仰け反らせた。シンクを掴む手に力が籠り、尻を高く持ち上げる。太腿にバターと自分の体液の混ざったものがつたい、むず痒さに世良は身体を揺らす。それは堺に新たな快感を与え、余裕を奪った。
「っく……お前っ……!」
「ああっ!」
激しく突かれ、世良は声を上げる。堺は、更に締め付けてくる世良に、眉間に皺を寄せた。世良が感じただけ、堺も世良に追い詰められていくからだ。これ以上余裕を無くしてしまうのは、何だか自分が許せなくなりそうだった。
「お前なっ……締めすぎなんだよっ……!」
堺に怒気の含まれた声で言われ、世良は肩をびくりと震わせるが、
「あっ……そ、んなこと、言われてもっ……!」
気持ちい、と世良は甘い声を漏らす。それは明らかに煽っているとしか思えず、堺はそれを聞いて更に眉間の皺を深くした。
「っ……!お前な、」
墓穴掘ったって分かってんのか。
堺は心の中で世良に言い、世良の腰を両手で掴んで思い切り中を突き上げた。
「ひ、あぁっ!」
そして続く、痛いほどに激しい抽挿に、世良は身体をがくがくと震わせた。弱い所ばかりを強く突かれ、世良はもう何も言葉に出来ず、ひたすら喘ぎながら堺の欲望を全身で受け止める。
「っや、ああっ、んっ、あっ…!」
堺はぐちゅぐちゅと音を立てて世良の中を蹂躙しながら、世良のものを握った。
「やああっ!」
世良のものはもう今にもはち切れそうなほどに昂ぶっていて、堺が触れた時点でもう先端から蜜を溢れさせていた。堺がどろどろの指先で世良のものの先端の窪みを抉ると、世良の背中が小刻みに震えて、強張った。
「だっ、だ、めっ!堺さんっ……!」
「もう限界かよ?」
堺が世良に囁くと、世良はその声にすら快感を覚えて全身の毛を逆立てる。
「は、いっ、もう、俺………っ!」
後はもう言葉にならず、呼吸を乱す世良に、ふ、と堺は口の端を歪めた。そして、抽挿の激しさをそのままに世良のものを強く扱いた。
「いっ、あっ、あぁっ、さ、さかいさぁんっ……!」
世良はそれに耐えきれず、大きく身体を震わせて、シャツの内側にどくどくと白濁した液を吐き出した。
同時に、世良の中の堺のものがより一層きつく締め付けられ、堺も限界を迎えた。
「く、っ………!」
「うあ、あっ……!っは……さ、かいさんっ………。」
体内に吐き出される熱を感じ、世良はうっとりと目を細めた。
堺は乱れた呼吸をゆっくり整えながら、精液とバターにまみれてどろどろの自らのものを抜いた。しかし、世良はそのまま動かない。
「………世良?」
堺が名前を呼ぶと、世良は無言で、シンクに掴まったまま顔だけをそっと堺の方へ向けた。その瞳は少し悲しげに潤んでいて、激しくやりすぎたか、と堺は多少罪悪感に駆られた。
「さ、堺さん……。すみません……。」
「は?……何がだよ。」
「あの、その、堺さんのシャツ……。」
「…………。」
世良の視線の先のどろどろのシャツを見て、堺は小さく溜め息を吐いた。そして、世良の身体を起こし、その頭をくしゃりと撫でた。
「……もう一度洗濯すりゃいいだろ。ただし、干すのくらいは手伝えよ。」
堺の言葉を聞き、思いの外彼が怒っていないことを知って世良の目が輝いた。
「は、はいっ!勿論ですっ!」
世良は言い、堺に撫でられた自分の頭を嬉しげに撫でた。そんな世良を見て、堺も小さく微笑んだ。
「あ……それから、堺さん、朝ご飯買ってきてくれたんですよね。ありがとうございます!」
「気にするな。……それより先に、シャワーだ。」
「あ、一緒に入ります!?」
「誰が一緒に入るか馬鹿。」
「えー!?入りましょうよ!」
「馬鹿が伝染るからお断りだ。」
「伝染りませんよ!」
「馬鹿の自覚はあるのか。」
「そうじゃなくて!」
二人の休日は、始まったばかりだ。
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『紅粋』のゆいさんから相互記念に頂きました!
リクエストで彼シャツといったら濃厚バターなサクセラが嫁にきて下さったよ…///!!!
萌え…燃えましたありがとうございます!!!!
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