// La confiance sur un téléphone portable et la fenêtre
午後8時。私はポテチの袋を破いて、自室で買ってきた月刊誌をぱらばらと眺めていた所だった。 突如鳴った携帯電話の呼び鈴に、ぐぐぐと腕を伸ばして、なんとか充電器から取り外した。 通話ボタンを押せば、聞き慣れた声が聞こえてくる。雷蔵だった。 「ねえ、三郎…どうしよう」 「何が」 「さっきね、ばったり鍛冶邸さんに会ってね、」 「あーだいたい想像つくわ」 「ファンタ貰ったんだけど、飲むべきか飲まざるべきか」 「そっちかよ!」 「ていうのもあるんだけど。さっき、日曜にデートに誘って」 「積極的だな」 「流石にやりすぎだよねぇ……、僕嫌われてないかな……」 「天地がひっくり返っても無いから大丈夫だ」 電源ボタンを押して、はあ、とため息。さっき喧嘩したばっかりの私にそれを訊くなと思わないこともない。 続いて、新着メール一件の表示。 確認すれば、差出人はしかしなんとまあ、鶯。件名に、「窓、鍵開けて」とだけ、本文には何も書いていなかった。ベッドサイドの窓のロックを、バチンと外す。一メートル三十センチ隔たったその先に、真っ赤に頬を染めた鶯がいた。喧嘩したことなど吹っ飛んだかの様に、それだけ、余裕もなさそうだ。 「もうお前らなんなんだよ」 「どうしたらいい!?」 「もちつけ」 「餅なんか衝けるか馬鹿」 「馬鹿っていうな馬鹿」 「不破くんが、今度の日曜、暇?って」 「ふーん、良かったな」 「なんて返信すればいい!?」 「暇です、でいいんじゃないの」 「良くないよ!私不破くんとデートなんて無理だって多分絶対」 「お前言ってることが支離滅裂だぞ。そういや、メアド」 「さっき交換した、ばっかり」 「…………へえ」 「今の間は一体」 「まあとりあえず、暇にしとけよ。好き合ってんだろう?」 「……」 赤くなって押し黙った鶯は、無言で何やらメールを打っていた。 それが、三日前のこと。 日曜の朝、午前6時。若干涙目の鶯から、洋服どうしようとヘルプ要請。 私はつい三時間前に眠りについたばっかりなのだが。それ以前にデートの前に幼なじみとはいえ男にヘルプ要請ってどうなんだ。訊けばあいつに電話したが眠いの一言で切られた、ということだった。それが普通の反応だ。 まあ、だがしかしなんだかんだで逃げない辺り、鶯の前進したところと言えるだろう。 「どこに何しに行くことになったんだ?」 「お昼食べて、映画観に行くことになった」 「で?結局、付き合うんだろうな」 「……わかんない」 ムスッとした表示でしゃこしゃこと歯を磨く鶯の頭をぱこんと殴る。 「お前もういっそ一回くたばれば」 「ひどい」 いつもと立場が逆になったような気分だ。いつもこうなら、少しは可愛げがあるものだろうに。 「だいたいなぁ、お互い好き合ってんのに、付き合わないとか、贅沢なんだよ」 「じゃあ、あんたらは付き合ってんのかよ」 「……」 ぐう、と言葉に詰まる。 「俺達は別だ、別。出会った時から、結ばれる運命なの。活字女の分際で揚げ足とんな」 畜生さり気なく惚気やがって鉢屋三郎めが……!と、鶯が苦々しく呟いたのは聞かなかったことにした。 「初めての恋愛マニュアル、的な本があれば良いのに」 「…………、お前さあ、馬鹿なの?それとも寝ぼけてんの?」 「……たぶん馬鹿の方」 それがわかってりゃ正常だ。 携帯電話と窓伝いの縁故 (いってらっしゃいと見送って、) (早速、ケータイをパカッと開く) |