[追記]
路地裏をふらふらしていれば、絡まれるのは至極当然なことだと思う。そう。かつては私だって面倒を避けるために人が多い道を選んだり、夜になれば明るい通りを選んでいた。
だけど不思議なことに、私は面倒なことに巻き込まれる体質らしい。 電車に乗れば痴漢に会うこと必須、エレベーターでも同様。エスカレーターでは必ず盗撮にあう。会社では上司同僚取引先からのセクハラなんて当たり前。対抗した結果、何度も左遷された挙げ句状況は悪化してあっという間にこちらのクビを飛ばされた。ついでに道を歩けばチンピラに絡まれ所持金を失う。最悪の場合襲われかねない。 補足までに歴代彼氏の紹介をすると、DV野郎に異常性癖野郎ばかりだった。これは私の見る目がなかったことを呪う。同意がなければどんな関係であっても強姦だからね。対複数とかマジで死にたかった。
そんな私がまともに再就職なんてできるわけもなく、どうやって生活しているかと言うと、
「ナァいいだろ?俺たち困ってるんだよ」
こう言う輩をカモにして生きてる。 立ってるだけで寄ってくるんだから働くよりもよっぽど楽だと気付いたのは、対複数を強要してきた元彼に制裁を加えたときだ。
「あの、今本当に手持ちがなくて…」 「ふーん…」 「じゃあさ、オネーサンが遊んでよ」
ホント、私の世界はゴミみたいな世界だ。 さんざん意味のない弱個性だと言われ続けた私の個性は、こういう時便利に扱える。 まずは声をあげられないように喉を潰す。そのあとは混乱して動きが鈍ったところに間髪入れず動脈を切る。そうすればあっさり相手の命は尽きる。 どいつもこいつも、女だからってナメるのは止めた方がいいと思うんだ。ハナから格下だと決めつけてるからこうなるんだよ。もうちょっと警戒してたら死ななくてすんだかもね。
「あーあ、最近しけてるわ」
動かなくなった男の懐を漁りながら考えるのは、大体いつも同じ。財布にいくら入ってるか。趣味の悪いアクセサリー類はどれくらいの値がつくのか。 まぁ今回は本気で貧乏な輩だったらしい。僅かばかりの現金と多少値がつきそうなアクセサリーだけ取って、ポケットにねじ込んだ。 溜め込んだアクセサリー類は、今度旅行に行ったときにでも質に入れに行こう。そう思って腰をあげたときだった。 振り返った先に継ぎ接ぎだらけのコスプレ野郎がいた。
あー、しくった。 なんて思う間もなく相手は口を開いた。
「判断が早かったな」 「早期判断しないと犯されるだけなので」 「馴れてるようだが、よくあることなのか?」 「まぁそうですね」
私の頭の中では、どうやってこの場を切り抜けるかってことだけ考えてる。 だって通報されたくないもん。どこから見られてたのかわからないけど、反撃しただけならともかく窃盗までは見逃されないはず。そもそも過剰防衛でブタ箱行き確定ですね。それを回避するには目の前のコスプレ野郎も殺すしかない。だけど、どうにも殺せそうな気配がない。
「あんたの個性は?」 「爪を伸縮させられるだけですよ」 「それだけか」
なんなんだこいつ。もう通報されてもなんでもいいから逃げようかな。だってなんか気持ち悪い。 例えるなら、暗闇の中で足元を何かが這いずってるような気持ち悪さ。こいつはそこらのチンピラと格が違う。私がやる前にこちらが殺される。
「そうなんですよ。じゃああの、私はちょっと急ぐのでこの事はご内密に」 「なあ」
まだなんかあんのかよ。 まさか引き留められるとは思ってなかったから、ついか弱い顔を作るのを忘れて振り返ってしまった。 視界に入った継ぎ接ぎ野郎は、一般人らしからぬ顔で嗤っていた。
「お前、こっち側に来いよ」
あー。今までこんなことなかったのに、なんで今日にかぎってこんなヤバいやつに見つかったんだろう。こいつ絶対堅気じゃないよ、誰に聞いても満点回答来るほどヤバいやつだよ。だってもう見た目がヤバい。偏見があるとかそんな意見は求めない。
今日は間違いなく厄日だ。
(この殺法はちゃんと爪の手入れをすれば、誰でもすぐにでも実践できるよ)
(ちなみに原作履修してないから雰囲気だけ楽しんでほしい) (キャラ違ったらごめん!!!)
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