話し合いの結果、やはり棒倒しはB組とC組の合同チームで行われるらしい。
そうして、B組とC組の生徒達は総大将を誰がやるのか話し出した。
「サッカー部の坂田は?」
「レスリング部の川崎も強いぞ」
うん、僕はレスリング部の川崎がいいと思う。ここは運動部のエースがやるべきだよ。僕みたいな脇役キャラは端に消えます。
そう思って集団の端に逃げようとしたとき、恐ろしい発言が聞こえた。
「我々風紀委員は、風紀委員長の雲雀恭弥さんを総大将に推薦します」
草壁てめぇぇぇぇぇ!!!!!!!
なに勝手なこと言ってんの!?本人の許可は!?
おいこら、自称風紀委員も一斉に賛成とか言ってんじゃねーよ。リーゼント集団にビビっちゃって、他の生徒も「あっ、じゃあ、ヒバリさんで…」とか言い出してるじゃないか!
B組とC組の生徒からの視線が痛い。
なにこの空気。断りづらい空気。自称風紀委員のリーゼント共がキラキラした視線を送ってくる。ウザくて目をそらすと、草壁と目が合った。ウインクされた。
ヒバリは激怒した。必ず、かのケツアゴのフランスパンを除かねばならぬと決意した。
「僕が、やるよ」
言わされた感丸出しで言う。風紀委員は後で体育館裏。
「倒さないでね」
棒に登ってから、下で棒を支えている生徒達にそう声を掛けると、「はいいい!!!」と怯えた様子で返事が返ってきた。
「倒さないように頑張って支えてね!みんな、信じてるよ!(ニッコリ!)」くらいの気分で言ったんだけど、どうにも機能しなかったらしい僕の表情筋と声帯。
言葉足らずはコミュ障だから諦めてる。
「用意!開始!!」
掛け声と共に棒倒しが始まる。
地上では男達のむさ苦しい乱闘が行われていた。人数が多いからか、僕の乗っている棒は全く揺れず、安定している。
A組の棒を見てみると、既に倒れそうになっていた。あ、倒れる。
と、思ったら沢田は死ぬ気モードでパンツ一丁。星柄だ。ヒュー、イカしてる。
地面に足を着かなければいいとかいう無茶苦茶ルールで沢田達は騎馬を作り、生徒達を吹き飛ばして僕のもとへ走って来た。
あれ?こっからどうなるんだっけな。
記憶を辿っていると、なにやら急にあたりが静まり返った。
下を見てみれば、いつの間にか騎馬が崩れていて、沢田と了平、獄寺が倒れていた。山本はその場で苦笑いを浮かべている。
そーいえば、了平と獄寺が喧嘩して騎馬を壊したんだっけな。
それからは、何故か殴り合いの惨事に。
もう見てられない。僕は耳を塞いでその場を去った。
というのは嘘だ。
棒から降りて本部テントに向かう。
マイクの音量を最大にして、声を吹き込んだ。
「風紀委員長より全校生徒に告ぐ。
今すぐ乱闘をやめろ。やめなければ、風紀委員が男子全員丸坊主の刑に処す」
そう言えば、ざわめきがぴたりと止まった。
そう。みんな、髪は大事なのだ。
このとき雲雀は気づいていなかった。
イラつきにより、自身が無意識に膨大な量の殺意を放っていたことを。
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