今までで一番、感覚的に短い発情期だった気がする。目が覚めれば三月さんとセックス、気持ちよくて気を失って、の繰り返し。あっという間に時間が経って。
その間は世話も食事も三月さんがやってくれた。
憂鬱でただひたすらもどかしい発情期を過ごすだけとは違って、飢えていたのに満たされた時間だった。

だけど、うわー、うわー。
ベッドに埋もれて、晴れやかなのに腰が痛いのを堪えきれず呻く。
ラブホテルからいつもの三月さんの部屋で過ごした日々を思い出すと顔が熱くなる。それと同時に、不安も。
何度も中出しされてるけど、もう妊娠したのかな。確率としてはあるけど絶対じゃない。
よ、養育費とか貰えるのかな。子供ってすごいお金がかかるみたいだし、バイトだけじゃどうにも出来ないに違いない。

ぐるぐると考える俺に三月さんは温い麦茶を差し出してくる。うま。染み渡る。水じゃなくて温いお茶。三月さんはやっぱり優しい。

「どうした」
「こ、」

そんな優しい人に果たして頼んでいいのか。
三月さんは無言で促してくる。どうしよう。いやでも散々お金もらってもっと寄越せなんて図々しいかな。でも子供出来たらみ、三月さんにも責任がある、はず。女々しい考えだ。

「子供の、養育費とかって…」

まるで面倒な女みたいな発言だ。
すぐ金のこと。自分でも嫌になってくる。

「孕んだのか」
「わっ、わかんないですけど…も、もしということもありますし」

きっと面倒だからと縁を切られたら子供も俺も飢えて死ぬだけだ。
今のうちにどうにか頼んでおきたいものだ。
ふん、と鼻で笑った三月さんにびくりと震える。なんて思ったんだろうか。嫌なやつと思われたに違いない。

「問題ない」
「本当ですか…!」

よかった、今後もお金をくれるらしい。そう思うと腰の痛みも仕事をして疲れたのと同じようなものだ。
なんだか気分が上がってきた。

ゆっくり起き上がって、脱ぎ捨てた服を着る。準備を終えた頃三月さんは立ち上がって、少し歩いてから振り返った。その背中を追う。
家まで送ってくれるらしい。優しいんだなあ。

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