信じられない。
飛段と一緒に爆発させようなんて有り得ない。どう見ても私は飛段のセクハラの被害者だというのに。
苛々しながら廊下を早足で歩く。これから自室に戻ろうか、それとも兄さんを探そうか…。
考えていると視界の端に光るものが映った。近付いてみれば細いワイヤーだった。指でつまみ上げ、しげしげとそれを見つめる。近くにはデイダラ、自分、サソリさんの部屋がある。持ち主はおそらく彼だ。



「サソリさーん」

ドアをノックしてみるが、返事がない。いないのだろうか。
気になってドアを開けてみる。
中には傀儡のパーツが無造作に転がっていた。頭、腕、足…まるでホラーだ。

「あれは…サソリさん?」

先程見たサソリさんが静かに立っている。前にしゃがみ込んで呼び掛けてみたが返事をしない。動きもしない。チャクラも感じられない。


「無断で人の部屋に入るとは躾がなってねぇな、ガキ」


聞き慣れない声が聞こえた。ドアの方に視線をやれば、腕を組んでドアに寄り掛かっている赤毛の男がいた。
初めて見る顔だ。

「失礼ですが、どちら様で?」

「嗚呼、この姿じゃ初めましてだな。サソリだ」

「…嘘だろ」

「嘘じゃねぇ」

あんな厳ついおっさんの中にこんな美青年がいたのか。末恐ろしい。あれ?でもサソリさんは随分前に里を抜けたって…。

「お若いですね」

「まぁな」

「まさか噂に聞く人傀儡ですか」

「よく知ってんな」

そう言いながら私の隣に腰を下ろし、胡座をかいた。そして工具を手に取ってサソリさんが中に入っていた傀儡の腕を弄りだした。何をやっているのかさっぱり分からない。

「何の用だ」

片方の手の指からチャクラ糸を出して傀儡の腕を動かしながら、もう片方の手で工具を器用に動かす。
私は先程拾ったワイヤーを差し出した。

「これ、サソリさんのですか?」

「ん?ああ、俺のだ。わざわざ届けに来たのか?」

ワイヤーを受け取りながら鼻で笑った。次に浅いため息を吐くと、傀儡を扱っている手を止めて工具を床に置く。
どんっ、と体に衝撃が走り、倒れる。瞬時に両手首を床に押さえ付けられサソリさんが覆い被さるように私の上に屈み込んだ。押し倒されてしまった。

「いたっ…何するんですか」

「分かっちゃいねぇな。ここがどこか分かるか?」

「どこって…サソリさんの部屋?」

「俺は男で、お前は仮にも女だ。少しは危機感を持て」

「仮にもは余計ですよね」

そう笑うと、サソリさんの顔が歪んだ。パッと押さえ付けていた両手首から手を離し、私の上からも離れた。

「俺に押し倒されて顔色一つ変えなかった女はお前が初めてだぜ」

「はは…喜んでいいんですかね」


苦笑すると彼は面白そうに目を細めた。美形を間近に見るのはサスケやイタチ兄さんで慣れている。でも流石にサソリさんの顔の整い具合には緊張した。

「いま俺がやったこと以上のことがあってもおかしくねぇぜ?ここには男しかいないんだからな」

もしかしてサソリさんは身をもって教えてくれたのではないだろうか。
少し感動していると大きな音を立ててドアが開いた。

「旦那ぁ!なまえ知らねーか?」



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