隣の部屋はデイダラとかいう金髪の青年と聞いたが、反対の隣の部屋は一体誰なのだろう。聞くのを忘れていた。まぁ、ここに慣れていく内に知ることが出来るだろう。
ずっと部屋にいるのも何だかつまらないので先程リーダーが私を紹介した広間に行ってみようと部屋のドアを開けた。
「……」
「……」
丁度、人が通っていた。
腰が曲がっているのか、私より背が低い。その人はじっとこちらを見ている。顔が物凄く怖い。
「…こんにちは」
何を言えば良いのか分からず、我ながら阿呆な言葉を漏らしてしまった。
その人は私を凝視し、眉に皺を寄せながらこう言った。
「なんだ、まだガキじゃねぇか」
「…失礼ですね。私はもう18です」
片眉をあげる。何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。しかし、私の発言に比べればこの人のガキ呼ばわりの方が気に障る。
「お名前をお聞きしてもいいですか?」
「………サソリだ」
随分ためてから名を名乗った。
サソリさんと言うのか。…サソリ?もしかして砂隠れの、赤砂のサソリ?これはまたイタチ兄さんに続き、有名人がいるものだ。念の為、聞いてみよう。
「赤砂のサソリ、さんですか?」
「俺を知っているのか。小僧」
「…は?サソリさん。今なんと?」
何やら生まれてこのかた一度も言われたことのない言葉が聞こえた気がした。この厳ついおっさんは今なんと言ったのだろうか。
「俺を知っているのかって言ってんだ、小僧」
「私、小僧じゃありません。どうせ言うなら小娘にしてください」
おっさ…サソリさんの目がこれでもかと言うほどに見開かれた。まさかこのおっさん、私のことを男と勘違いしていたのだろうか。信じられない。
そういえば昔、兄さんと最初に顔を合わせたときも男の子と間違われたことがある。そんな私を見てサスケは大笑いしていたっけなぁ…。
「お前、本当に女か?それとも大蛇丸みたいなオカ…あぶねぇな」
「そこまで言いますか普通。サソリさんは天才だと聞いていたのですが」
サソリさんの言葉にカッとなって思わずクナイを投げた。が、しかし、尾らしき物に弾かれてしまう。砂隠れの友人から聞いた話では天才傀儡造形師と言われているサソリさん。だとすると多分これは…。
「これは傀儡ですか?」
「さぁ。どうだろうな」
私から視線を外し、歩き出す。見ていると、私の部屋の隣のドアで立ち止まった。ああ、もう片方の隣人は彼か。ならば、挨拶をしておかなければいけない。
「隣の部屋、よろしくお願いしますね!」
結構大きな声を出したから聞こえた筈だ。返事をしないサソリさんの姿が部屋に消えていくのを見届けて、私は広間へと向かった。
広間の扉を開けて一歩足を踏み入れると、足元に二、三匹の白い蜘蛛のようなものが近付いてきた。
「喝!」
声が飛んでくると同時に爆発が起こる。私は素早く上へ飛ぶ。足を天井につけ、下を見た。
「結構速いな、うん」
金髪ロン毛髷が私を見上げている。こいつがデイダラか。
「いきなり何するんだ!」
「リーダーが目を付けた忍がどのくらい強いのか知りたくてな」
にやりとデイダラの口が歪む。
まだやるのかと身構えていると、彼は近くにあったソファーに腰掛けた。そして私を見上げ、こう言った。
「降りて来いよ。話がしたい」
(110805)
← | →
back