「なまえ…だったかしら」

「はい。小南さんですよね?」

「ええ、これからよろしくね。女同士、仲良くやりましょう」

にこりと小南さんが笑う。すると辺り一面に花が咲き乱れている幻覚が見えた。美人は笑うだけで幻術が使えるのか。

「ペインに拾われたのね…大丈夫だった?」

「あの人ペインっていうんですね…失礼な態度取ってしまいました」

「他のメンバーはリーダーって呼んでる。態度なんて気にしなくて良いのよ。いきなり現れた忍に態度もクソもないわ」

形の良い唇からこんな言葉が発せられるとは思ってもいなかった。少し面食らってしまう。

しばらく小南さんと話しながら歩いて、とあるドアの前で止まった。

「ここが部屋よ。ベッドくらいしか置いてないけど…好きにして良いから」

「部屋があるだけありがたいです。ありがとうございます」

家具を置けば丁度良い広さだ。今度タンスやテーブルを買いに行こうか…いやいやいやいや。待て私。小南さんが良い人過ぎて流されていないか。まだ暁に入るなんて一言も言っていない。それに犯罪者だらけのこの場所で暮らせる筈がない。いつか絶対に殺される。

「一つだけ言っておくけど、逃げようなんて考えるだけ無駄よ。ペインが決めたことには逆らえないの。…暁へようこそ」

畜生、ただの死の宣告だ。
小南さんがあまりにも綺麗に笑うから、逃げることを諦めた。正しく言うとどうでもよくなった。つくづく私は美人に弱い。直ぐに丸め込まれてしまう。

「隣の部屋はデイダラが使ってるわ」

「デイダラ…?」

「金髪で長髪のやつよ。歳はなまえに一番近いんじゃないかしら。なまえいくつ?」

「18です」

「それならデイダラが一つ上ね」

デイダラとはあの髷か。一瞬女の子に見えたことは今後誰にも口外しないようにしよう。
ふと、背後に気配を感じて後ろを振り向くとリーダーが立っていた。

「馴染めそうか?」

「えっと…はい、まぁ…何とか」

「いずれお前には任務をこなしてもらう」

「私に犯罪者になれと?」

「そうだ」

このピアス野郎。さっきは小南さんが美人過ぎて丸め込まれてしまったが改めて考えるとここから逃げたくて仕方がない。
顔をしかめているとリーダーが綺麗に畳まれた黒い布を差し出した。

「任務で外に出る場合はこれを着ろ。暁の一員という印だ」

広げるとリーダーや小南さんが着ているものと同じコートだった。そのコートは一目見たときから気に入っていて、自分の物になると思うと正直嬉しい。暁も案外いい所じゃないか…何だか物で釣られた気分だ。

「俺と小南は普段、このアジトにいない」

「なまえに会えないのは寂しいわ…」

「私も寂しいです小南さん…」

儚い雰囲気を醸し出す小南さん。横でピアスリーダーが「なまえ、俺は?」等とほざいていたが無視だ。聞かなかったことにしよう。
小南さんが少し残念そうに肩を落としているリーダーを引き摺り、私に軽く手を振って部屋を出て行った。
女が強いのはどこも同じだな。



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