殺気に当てられながら一人の人物に目が止まった。唯一その人は私に殺気を飛ばしていなかった。整った顔立ち、綺麗な黒い髪。親しい友と瓜二つなその顔。

「イタチ、兄さん…?」

思わず駆け寄った。この雰囲気、目元の皺…うちはイタチだ。
駆け寄る私を見て兄さんは目を細めた。その仕草が昔と全く変わらない。涙が出そうになった。

「兄さんの…兄さんの…、ブラコン野郎おおおお!」

涙を堪えながらクナイを構え、兄さんに向けて投げ放った。クナイは虚しく空を切る。と同時に背後で感じる気配。素早く身を捩って再度クナイを投げる。だが当たらなかった。

「あの時、どれだけ心配したと思ってんだ!」

一人の影分身をつくり、手裏剣を二人で投げる。それでも当たらない。どれだけ投げても当たらない。

「兄さん。サスケはあなたを許していない…だけど」

接近して足を振り上げる。しかし、簡単に掴まれてしまった。次にもう片方の足を振り上げた。それは兄さんの頭上を掠める。不意に足を掴まれている手に力が入り、壁に向かって体が叩き付けられた。

「私はサスケの様にあなたを憎んでいない」

背中に走る激痛に耐えながら兄さんの前に立つ。すると誰かが口笛を吹いた。目をやれば銀髪オールバックの男が面白そうにこちらを見ている。

「強くなったななまえ」

「兄さんも昔より強くなりましたね」

にっこり笑うと釣られたかのように兄さんも少し笑う。笑った顔が相変わらず綺麗で釘付けになってしまった。

「なまえは正式なメンバーではないが暁に入ってもらう」

私と兄さんのやり取りを見計らってリーダーが口を聞いた。咄嗟に反論しようと言葉を探す。

「だから犯罪は犯してないとさっきから…!」

「俺が決めたことだ。異論は認めない。小南、空き部屋があった筈だ。案内してやれ」

小南と呼ばれた女性が私の隣に立つ。兄さんに負けず劣らずの美貌だ。小南さんは小さく手招きをして扉に手をかけた。
部屋から出るとき、背中に痛いくらいの視線がいくつも突き刺さる。先程兄さんに叩き付けられたときの痛み以上だ。
この人達に殺されるのだけはどうしても避けたい。



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