昨日も追い忍に追われ、
今日も追い忍に追われる。
私は外の世界を満足できるまで眺めていたくて抜け忍になった。他者からすればくだらないかもしれない。でも私からすると素晴らしいことだ。
今までに私を狙った追い忍は結構いる。全員返り討ちにしてやったが。それが理由なのか、ここ最近現れる追い忍のレベルが高い。何故こうも狙われてばかりなのだろうか。少しは身を隠すか、気配を消す等した方が良いのだろうか。…面倒くさいのでする予定はない。
追い忍が鈍い音を立て、地面に倒れたときだった。不意に背後から声がした。
「見事だ」
気配に全く気付けなかった。きっと相当の手練れだ。用心しながら素早く後ろを振り返る。
見れば顔中にピアスが付いているオレンジ頭の男がいた。なかなか洒落た黒のコートを着ている。
「誰だ」
「…たまたま通り掛かった忍だ。見たところ抜け忍の様だが」
「ああ、確かに抜け忍だ。お前、明らかに追い忍じゃないな。何の用だ」
普通、敵なら殺気を飛ばしてくるのだがこの男から何故か殺気が感じられない。今この段階で敵ではないと取って良さそうだ。しかし、いつ相手の気が変わるかは分からない。少しでも気を抜けば命取りだ。
「殺す気はない。一つ、質問をしよう。抜け忍になった目的は何だ」
「…色んな国を自分の満足いくまで眺めること」
「なかなか良いな。よし、俺に着いてこい」
そう言うと私を担いで走り出す。着いていくというより連れていかれているという感じだ。抵抗しようと手足を動かしても男の腕はびくともしない。
殺す気はないと言っていたが、どうも不安だ。拷問とかされたりしたらどうすればいいのだろう。
「ここだ」
「…ここは」
「俺達のアジトだ」
「アジト?お前、組織か何かか?」
「ああ。俺は暁のリーダーだ。お前には俺達の仲間になってもらう」
暁。確か犯罪者の組織であると耳にしたことがある。
…犯罪者?誓っても良いが、私は追い忍達を殺してはいない。失神させていただけだ。この流れだと、この男は私をその暁とやらに勧誘…いや、強制的に入れるつもりだ。
「犯罪を犯した覚えはないのだが」
「暁を知っていたか。ならば話は早い。俺が呼んだら出てこい。…良いな?」
男が大きな扉の前で立ち止まって言った。いきなり殺気に当てられ、頷くしか出来なかった。
暁のリーダーに呼ばれ、姿を現せば向けられる無数の殺気。
まだ、死にたくはない。
(110730)
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