トビはいつもゼツといるようで、デイダラとはたまに会う程度らしい。
たまに会う頻度が良い、それが身のためだ。心からそう思った。

今日はデイダラとサソリさんコンビは任務、イタチさんと鬼鮫さんも任務である。みんな夜までには帰ってくるそうだ。夜に終わらせるとかとんだホワイト企業だ。リーダーも不在で勿論、小南さんもいない。トビもゼツもいない。
残るは…、

「よォ、浮かない顔してんな」

「眠いからだよ…おはよう飛段」

大広間に顔を出すと飛段が上半身裸で鎌を磨いていた。刺さったら痛そうだ。私はそんな呑気なことを考えながら大きなあくびをし、洗面台へと向かう。
歯磨きと洗顔を済ませ、再び大広間へ戻ると飛段はまだ鎌を磨いていた。

「角都さんは?」

「換金所だ。賞金首も狩ってくるみてーだから遅くなるってよ」

「じゃあ今、飛段と私しかいないのか…」

「暇なら殺し合いでもするか?」

ギラリ、と飛段の目と鎌が光る。
冷や汗が背中を流れた。この目は本気だ。

「しないよ。朝から血流したくないでしょ」

「それもそうだなぁ、また風呂入んなきゃならなくなるしな……よぉし」

飛段が鎌を磨くのを止め、確かめるように振り回す。空を切る音が鈍く響くと彼は満足そうな顔をして私の隣に座った。

「お、嫌がらねぇんだな」

「横に座るくらいで嫌がらないよ。くっついてきたら刺すけど」

「こえーなぁ。あ、でも俺死なねぇから」

飛段曰く、彼は不死身らしい。バラバラにされても死ぬことはない。まるで化け物だ。人間なのか疑ってしまう。
半信半疑で話を聞いていると彼は愉快そうにケラケラ笑った。

「俺は今22で不死身だけどよ、角都なんてもう90代だぜ?わけわかんねーよ」

「90代って…え?本当に?」

「マジだマジ。よくあんな元気だよなー」

そう言いながら大きく伸びをして、私に向き直る。紫の瞳には好奇心が宿っていた。

「なまえちゃんよぉ、そんな見なりしてっけど女なんだよな?」

「…ちなみに聞くけど飛段はどこを見て男か女か判断してるの?」

「そりゃ決まってんだろ、胸だ」

きっぱりと言い放つ飛段が面白くて吹き出してしまった。そんな真面目な顔で言わなくてもいいだろうに。

「まぁ、それが手っ取り早い見分け方だよな」

「だろ?」

「でも、忍に性別も年齢も関係ないと思わない?」

そう問うと隣の銀髪は首を傾げ、片眉をあげた。頭の中は少々残念だが、顔と体が男前なのである程度のバランスが取れているのがまた憎たらしい。

「そう言われるとそうだな」

「飛段はどうみても忍者に見えないけど」

「ゲハハハ!だろ!?俺もそう思うぜェ!」

思っていたより会話が弾み、互いの戦術について話し盛り上がっていると誰かがアジトへ入ってくる音がした。
ややあって広間の入り口からデイダラが疲れたように現れた。コートは返り血を浴び、濡れている。

「おかえり!」

声をかけると、彼は少し目を見開いて驚いたような顔をした。しかしすぐに表情を戻して短く「ああ」とだけ言った。そして汚れたコートを脱ぎ片手に持ち、もう片方の手で結い上げている髪を解きながら大広間から出て行った。

「それでよ、やっぱ贄は最低1人は必要だよなあ!」

「ん?ああ、ないよりある方がいいよね」

彼の反応に疑問を持ちながら、飛段への返答を雑にしてしまったことに気付くのはその少し後だった。そんな私の態度を気に留めることもなく彼は話しかけてきてくれた。なんだ、思っていたより良い奴なんだ。



(150516)
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