「喧嘩でもしたのか」

隣にいるリーダーが抑揚のない声で尋ねてきた。デイダラは面白そうに私とイタチさんを交互に見る。

「していませんよ、喧嘩なんて」

嘘は言っていない。しかしリーダーは納得がいかないとでも言うように片眉を上げた。バレてしまっているのだろうか。デイダラはというと、生野菜のサラダを食べながらイタチさんと睨み合いをしている。

「別にしていようが構わない。ただし、任務に支障がでるようなら…わかるな?」

「ああ」

デイダラとの睨み合いを終え短い返事をし、私をちらりと見て食事を再開する。なんだか面倒なことになりそうだ。



朝食を済ませ、イタチさんの視線から逃げるように大広間を出た。アジトの廊下をデイダラと並んで歩く。

「イタチの野郎と何かあったのか?」

隣の彼は長い金髪を結いながら聞いてきた。男のくせに長すぎやしないか。

「大したことじゃないよ。それより、デイダラはこれから任務?」

「今日は休みだ。日中は創作活動、その後のことは考えてねーな」

「そうなんだ。3日後、実力テストがあるんだけどそれまで暇になっちゃって。なんか良い暇つぶし知らないか?」

デイダラは少し考えた後、私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。

「よし、今日は一日オイラの助手だ!」

「私が?」

「心配ねーよ。もう一人助手がいる」

そう言い終わらない内に廊下の奥から地響きが聞こえてきた。その音はものすごいスピードでこちらに近づいてきている。

「デイダラせんぱああああい!」

両腕いっぱいに白い何かを抱え、オレンジ色の仮面らしきものを付けた得体の知れない人間が駆け寄ってくる。
その人はデイダラの前で急ブレーキを踏み、息を切らしながら白い何かを地面に落とした。

「頼まれてた粘土です!丹精込めて作りました!…あっれー?このオトコノコは誰っスか?」

片方だけに空いてる穴はどうやら目らしい。私の顔を覗き込んでくる。負けじと仮面の穴を見たが、真っ暗で何も見えない。

「ゴラ!トビ!せっかく作ったんなら地面に落とすっつう雑な扱いすんな!勿体無いだろが!」

「うわわわ、ごめんなさい〜…ところで!先輩!このオトコノコは?」

悪びれる様子もなく私をまじまじと見つめるトビと呼ばれた人物。見つめられているかは定かではないが、仮面の穴から視線を感じる。
デイダラは浅くため息をついて頭をがしがしと掻いた。

「こいつは新入りのなまえだ」

「へぇ〜!あっ、もしかして僕の後輩にあたります?」

「まぁ…うん、そうだな」

デイダラがそう言うとトビと呼ばれた仮面の人物は私の手を取り、上下に激しく振った。

「はじめましてなまえくん!僕はトビって言います!いつもデイダラ先輩にパシられてます」

どうやら私は男として見られているようだ。サソリさんといいデイダラといい…髪か、髪が短いのがいけないのか。それとも体が女らしくないのだろうか。しかしこうなったら、とことんやってしまおう。

「よろしくなトビ!俺の名前はなまえ!硬いのはナシでいこうぜ!」

こちらも手を上下に激しく振りながら自己紹介をする。肩が外れそうだ。

「おい、何キャラだよお前…」

隣のデイダラが眉間に皺を寄せて呟いた。



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