バタンと扉が目の前で閉まる。
私は扉に手を掛けず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
イタチ兄さんから妹として見られているのは昔から何となく分かっていた。私も彼を実の兄として見ていた。だが、もう自分は彼が木の葉にいた頃のサスケと仲のいい女の子ではない。厳しい修行を積んだ上忍だ。そろそろ彼を兄と呼ばなくてもいい筈だ。
「…よし」
深呼吸をして扉に手を掛ける。
区切りをつけよう。今、この瞬間からイタチさんは兄だった人だ。これから兄と呼ばない。彼を兄と呼んでいいのは私の友であるサスケだけだ。
つい先ほど長年の再会をした友の姿が頭に浮かんだが、直ぐにかき消えてしまった。
暁には似ても似つかない木製の大きな長方形のテーブルにイタチさんとリーダーが席についていた。何やら話しているようだが二人は私が入ってきたと同時に二人は口を噤んだ。
「やっと来たか」
椅子に座ったままこちらを振り向くリーダー。何故いるんだ。帰ってなかったのか。
台所から「空いてる席に座ってください」と鬼鮫さんの声が聞こえる。テーブルを見れば四人分の席が並んで空いていた。皿さえ置かれていない。
内一つは多分小南さんの席。二つは飛段と角都さん。彼らのチャクラは起床したときからなかった。では残りの一つは誰なのか。
「飛段と角都は任務だ。あと旦那は食事をしねぇ」
いきなり隣から低い声がした。
「びっくりした…。おはよう、デイダラ」
「これくらいでビビんなよ、うん。突っ立ってねぇで座ろうぜ」
欠伸を噛み殺しながらまだ結っていない長い金髪を耳にかける。
「なまえ、俺の隣に座れ」
どこに座ろうか悩んでいるとリーダーの無機質な声が発された。横目でデイダラを見ると彼は「じゃあオイラはその隣な」と笑った。
イタチさんの視線が痛い。
(120204)
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