「はっ?…え、どういうことだ?」

一頻り叫んだ後、デイダラは頭を捻る。考える前におっさんから私を救出して欲しい。

「デイダラ、助けて」

そう言えばデイダラはハッと我に返り、素早く私の腕を引っ張った。サソリさんはそう簡単に離してくれないのではと思ったが、彼は眉一つ動かさずに私をデイダラの元へとやった。

「次からは勝手に外をフラフラするな」

「…すみません」

サソリさんが変化を解く。デイダラは元の姿に戻ったサソリさんをまじまじと見つめながら落とした粘土を片手で拾う。

「旦那、あんまなまえをいじめんなよ…うん」

「何のことだ」

鼻で笑いながら踵を返す。私は段々遠くなるサソリさんの背中を見送った。横ではデイダラが粘土をこねながら浅いため息を吐いている。

「すまねぇな」

「いや別に」

「しかし、変だな…」

「何が?」

粘土を二つに分けたり、くっ付けたりを繰り返しながらデイダラが呟く。問い掛けてみたが彼はまだ考え中のようで返答がない。すると遠くから足音が聞こえてきた。その足音は音のする間隔が狭い。走っていると考えられる。

「なまえ!」

「え」

ものすごい勢いで誰かが抱きついてきた。あまりの勢いに後ろへ倒れそうになるが、なんとか持ちこたえる。同時に首元に顔を埋められた。
デイダラは私に抱きついた人物を見て眉をひそめる。

「…兄さん?」

「おいイタチ、見苦しいぞ。離れろ」

いつの間にか兄さんの後ろに立っていたリーダーが呆れながら言った。
横を見るとデイダラは既にいなくなっている。昨日の言動を見る限り、彼は兄さんのことが嫌いのようだ。一体何があったんだ…。

「急に呼び戻したりしてすまなかった。イタチの件もあるが、なまえに予告しておきたいことがあるんだ」

イタチの件と言うのはなんなのだろうか。非常に気になる。そう思い、なかなか自分から離れてくれない兄さんの髪を引っ張りながらリーダーの言葉を待った。

「三日後、実力テストを行う。暁に入れる程の実力が本当にあるのか、この目で確かめさせてもらうぞ」

「…はい?」

「戦う相手は当日、俺が決める」

「え、ちょっと待ってくだ」

「全力で挑め。話はそれだけだ。…イタチ、いい加減にしろ」

リーダーが手の甲で兄さんの頭を軽く叩く。しかし兄さんは身動き一つしない。昔はこんな人ではなかったのに。



「兄さん、そろそろ離れて」

私たち以外に誰もいなくなってもまだ離れてくれない兄さんに話し掛ける。すると彼は私の首元に埋めていた顔を上げた。そして口を開く。

「突然いなくなるな」

「うん。ごめん」

「ちゃんと俺に一言言え」

「分かった」

「心配、したんだ…」

何年も会わない内にこの男は変わってしまったらしい。こんな風に抱きつかれたのは初めてだ。



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