「なまえがいない」

「はぁ?」

「なまえがいないんだ」

「もっとよく探してみろよ」

「隅々まで探してみたがどこにもいない。サソリ知らないか?」

知らねーよ、トイレとかじゃねぇの。そう言えば「違う」と即答された。
ノックも無しにドアを蹴破る勢いで俺の部屋に入ってきたイタチ。額には汗がにじんでいて、必死さが窺える。

「デイダラには聞いたのか?」

「門前払いだ」

「そうか」

確かデイダラはイタチのこと嫌っていたんだっけな。どうでもいいが。
さっきから隣の部屋から音がしないと思っていたが、まさかいなかったとは。イタチもイタチで心配し過ぎじゃないのか。小娘一人がいなくなったからってなんだってんだ。

「…おい大丈夫か」

頭を抱えるイタチに声をかける。相当のアレだな。なんだっけか…シスコン?いやでもなまえとは血の繋がりはない筈だ。だからと言ってこの言動が恋愛感情というのは違和感がある。

「もし暁を抜けていたらなまえは」

「アジトの場所も知っているし、メンバーの情報も少ないが知っている。リーダーに殺されるだろうな」

ゆっくりとイタチが項垂れた。本当大丈夫かコイツ。
不意にノックの音が聞こえ、こちらの返事を待たずにドアが開いた。

「サソリ、なまえとイタチ知らないか…ああ、ここにいたのか」

なんでこいつらは人を探す度に俺の部屋に来るんだよ。そう思いながらイタチの隣に立つリーダーを睨み付ける。しかしリーダーは気にも留めず口を開いた。

「なまえがいないからイタチに居場所を聞こうと思ってな。二人ともいなかったからサソリのところまで来たと言うわけだ。…そんな嫌そうな顔するな」

「リーダー、なまえの前にコイツどうにかしてくれ。重症だ」

顎でイタチをさす。リーダーはまだ項垂れているイタチを見て眉を潜めた。

「…仕方がないな。今すぐなまえと連絡を取ろう」

「ああ。そうしてくれ」

「…イタチしっかりしろ。俺が探してやる。サソリ、なまえを迎えに行け」

「俺がか?…めんどくせぇな」

リーダーがイタチの肩を軽く揺さぶる。このクソリーダー、自分が行けば良いものを。あとイタチはいつまでショック状態なんだ。これだから最近の若いのは。情けねぇ。

アジトから出てすぐ側に立っている木の上で待機していると、リーダーの声が脳に直接流れてきた。

─なまえはアジトから随分離れた所にいる。四時の方向、三十キロ先だ。

「わかった」

どこまで行ってんだよあのガキ。散歩にしちゃ行き過ぎじゃねぇか。こりゃ途中で敵に見付かるかもしれないな。



(110905)
(120127)加筆
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