「おおー、久しぶり…ちょ、待って!印組むな!」

「火遁、」

「うわわわわ、待てってば!」

サスケの背後に回り、後ろから片手で彼の口を覆う。もう片方の手は両手首をまとめて掴む。

「ん!?んんっー!」

「人の話を聞いてよ。久しぶりの再会なんだから」

サスケの口を覆っている手を離す。だが、まだ両手は拘束したままだ。
彼はイタチ兄さんとそっくりの瞳を潤ませる。え…もしかしてこれって…

「このバカなまえ!」

「いだっ!」

ごつんと鈍い音を立て、頭突きが額に直撃した。身構えていなかったので頭がクラクラして視界がチカチカする。彼の瞳が潤んで見えたのは目の錯覚か。

「俺を置いていきやがって…!ふざけんじゃねぇ!」

「いたたたたた…。ごめんねサスケ」

「別に俺は謝って欲しいわけじゃ、」

「私がいない内に里を抜けて、そんな男子らしからぬ格好…。しかも、大蛇丸のところに」

サスケが押し黙る。里を抜けて大蛇丸云々より、こんな前がはだけた服を着るなんて何かあったのだろうか。
私はサスケの拘束を解いた。

「もうなまえには関係ない。口出しするようなら殺す」

「物騒だね。私は悲しいよ」

こちらを睨んでくるサスケに力無く笑いかける。数年でここまでなるとは。昔はあんなに笑い合っていたというのに。
しばらく沈黙が続く。

「…まだお前のことを親しい友と思っているつもりだ」

「今、殺すとか言ったくせに」

「俺は復讐者だ。邪魔する者は親友であろうと殺す」

「うん。復讐頑張って」

軽く言うとまたサスケは黙る。私が復讐を応援するとは考えていなかったようだ。まだまだ詰めが甘いなサスケよ。
サスケは浅いため息を吐いてその場に腰を下ろす。そして私を見上げ、口を開いた。

「あれから一人か?」

「いや。つい最近、とある人に拾われた」

「相当の物好きだな」

「それはあまりにも失礼だよね」

良かった。サスケが笑った。さっきから無表情と怒った顔しか見せていなかった。なんだ、笑う顔は昔から全然変わっていないじゃないか。


―なまえ、どこにいる?


…は?
何の前触れもなく、頭の中に聞いたことがある声が流れてきた。一瞬、思考が止まる。幻聴だろうか。


―なまえ聞いているのか。今、一体どこにいるんだ。


ああ、分かった。これは幻聴なんかじゃない。この声はあの人だ。でも何故?周りに自分とサスケ以外の気配は感じられない。

「サスケ、私もう行くよ。大丈夫、また会えるから」

瞳をゆっくりと伏せ、サスケは立ち上がって私に背を向ける。
多分、肯定の意だろう。
私は瞬身でその場を離れた。



「親友…か」

自嘲気味に呟いたその言葉は風にかき消される。木々の葉が揺れる音がやけに大きく聞こえた。



「リーダー?」

―俺以外に誰がいる。

「いやいや、まさかこんな連絡手段があったなんて」

サスケからずいぶん離れた場所で、頭に流れてくるリーダーの声に話し掛ける。新感覚だ。

―ともかく今すぐに戻って来い。イタチが大変なんだ。

「え?兄さんが!?」

―サソリを迎えに行かせた。もうすぐ着く筈だ。

リーダーがそう言い終わらない内に草を踏む音が聞こえた。しかし、そこにいたのは傀儡のヒルコでも本体のサソリさんでもない。
長身で細身の砂隠れの忍がいた。顔は砂避けの布でよく見えない。

…リーダー、全く知らない人が来たんですが。



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