夕飯はとても楽しかった。リーダーと小南さんがいなかったのが少し残念だったが。
外見がとても個性的なゼツは夕飯の様子を見ているだけだった。どうやら普通の食事はとらないらしい。見た目が肉食植物なので大体予想はつくが。
角都さんとも話をした。彼は冷静な雰囲気を持っていて、あまり抑揚のない淡々とした話し方だった。メンバーが言うには暁の財布らしい。ということはおそらく計算が得意なのだろう。算術が苦手な私からすると羨ましい。

夕食を済ませ、風呂に入るときに真面目な顔で兄さんが「久しぶりに一緒に入るか……冗談だが」と言ってきた。私は呆れて声が出なかった。久しぶりも何も一緒に入ったことはない。その時、デイダラが「お前らデキてんの?」と冷やかしを入れてきたので腹に蹴りを入れておいた。



「覗かれなかったか」

「兄さん心配し過ぎだよ」

やけに広い風呂から上がり、広間に行くとソファーに座った兄さんが新聞を広げながら聞いてきた。暁には風呂も新聞もあるのか。

「なまえ上がったのか、うん」

「ああデイダラ。ごめんね、長風呂だったかな」

「別にそこは気にしてない。…なぁ、痛み止め持ってないか?多分、内臓やられた」

「さっき蹴ったところ?」

「ああ。旦那に傷薬もらいに行ったんだが、なんか機嫌悪いんだ旦那のやつ。もらえなかった…うん」

右にデイダラ、左に飛段。食事中に自分を真ん中にして繰り広げられる口論。サソリさんは相当、苛々していたことだろう。だからといって傷薬を与えないほどなのか。
しかし不意打ちだったとはいえ、内臓がやられるまで蹴っていたとは…申し訳ない。

「ごめん。ちょっとじっとしてて」

手早く医療忍術を使いデイダラを治療した。彼の目が驚いたように見開かれる。新聞を広げていた兄さんもこちらを見ている。

「兄さんも知らなかったっけ?私、医療忍術使えるようになったんだ、少しだけだけど」

「成る程な…リーダーが勧誘するわけだ」

新聞を畳みながらため息をつく。
すっかり回復したデイダラは礼を言い、私の手に飴玉を何個か握らせた。一体どこに隠し持っているんだ。

「助かった。それは礼だ、うん。…風呂入ってくるよ」

ひらひらと片手を振りながらデイダラは広間から出ていった。そんな彼を目で見送り、兄さんの隣に腰掛ける。

「…デイダラは駄目だ」

「何言ってんの」

「そのままの意味だ…もう遅いから寝ろ」

そう言って彼は何の躊躇もなく、私の額に口付ける。…今、なにが起こった。

「…おおお、おおやすみなななななさい」

顔に熱が集まってくるのが分かる。私は瞬身で自室へと戻った。ああいっそ消えてしまいたい。

「仲良いんですねえ」

「羨ましいか?」

「ええ。それにしてもイタチさん、嬉しそうですね」



気が付くと朝だった。昨日はベッドに飛び込んでそのまま寝てしまったようだ。ふと、昨日兄さんが私にしたことが頭をよぎる。

「…散歩しよう」

雑念を振り払うにはそれが一番良い。ついでに走ってみよう。暁のコートは別に着なくてもいいか。
動きやすい甚平に着替え、アジトを出た。

外に出ると澄んだ空気が体を包む。ゆっくり深呼吸をして、地を蹴った。頬に当たる風が心地よい。
しばらく走っていると人の気配を感じた。瞬時に自分の気配を消し、茂みから様子を伺う。

「あれ?」



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