兄さんの容姿とオーラに魅せられたのか、なまえは会って間もない自分の兄に懐いていた。兄さんも満更ではないようだ。
しかし、問題点がある。兄がいまだになまえを男と勘違いしていることだ。

「そうか。サスケより二つ年上なんだな」

「はい!でもサスケとは同い年のようなものです!」

ああ、言ってしまいたい。なまえは正真正銘、女だと。今にも笑いが込み上がってきそうだ。言ったら大声で笑ってしまう。絶対に。でも言いたい。

「良かったな、サスケ。いい友達ができたじゃないか。これなら俺も安心して…」

腹筋がおかしくなりそうだ。

「兄さん、言っておくけど…なまえは女の子だよ」

「…え」

なまえと兄のきょとんとした顔に俺は腹を抱えて笑った。



「…ははは、あはははは!」

「笑いすぎだよサスケ。何か傷付くな」

「だって、男と勘違いって…あはははははは!」

「なまえ、すまない。悪気があったわけじゃないんだ」

兄さんがなまえに謝る。それすらも面白い。笑いすぎて腹筋が痛んできた。
ふー、と一息つく。やっとおさまった。二人を見れば気まずそうに笑っている。

「…あ、そうだ兄さん、俺となまえに修行つけてくれよ!」

二人が気まずそうにしているのを見るのが嫌で、話題を無理矢理変えた。気まずくしたのは俺なのだけれど。

「サスケ…それは流石に」

「いいぞ」

「やったぁ!なまえ、兄さんが修行つけてくれるって!」

「いいんですかイタチ兄さん」

「サスケはともかく、なまえには才能があるからな。…もうチャクラを練れるんだろう?」

それがいかに凄いことなのかガキだった俺はまだ理解していなかった。



「…は、」

不覚にも随分と昔のことを思い出してしまった。まだ三人仲良く過ごしていたあの頃。今ではそれが嘘のようだ。
一族を殺し、里を抜けた実兄。
俺が下忍になった途端、意味不明な言葉を残して里を抜けた親友。
里を抜けるとき確か俺に他国を心行くまで眺めたいとかそんなことを言っていた気がする。他にも何か言っていたが本当に意味不明な言葉だったので覚えていない。
唯一信じていたなまえが抜け忍になったのが理解できなかった。今でも理解できていない。そして最近思うようになった。他国を眺めたいが為に里を抜けるあいつはただの馬鹿なんじゃないか、と。
アカデミーを首席で卒業し、わずか二年で上忍となったなまえ。妬ましくも思ったが、同時に友として誇りに思っていた。

なんだか頭が痛くなってくる。昔を思い出すのは体に悪い。特になまえに関しては。
俺は頭を冷やそうと刀を手に取り、アジトを出た。久しぶりに散歩でもしてみようか…。青い空を見上げ、考える。
少し遠出してみよう。


当てもなく歩いていると、アジトから結構遠くまで来たのだと感じる。周りに人の気配はない。
がさがさと近くの茂みが揺れた。動物か何かいるのだろう。そう気を抜いていると、

「あれ?」

茂みから人の声がした。すぐさま体を茂みの方へ向け、刀を構える。それにしても、聞こえた声を俺は知っている…ような気がする。
嫌な汗が頬を伝う。そして妙に胸騒ぎがする。一歩、後退って殺気を飛ばしてみた。しかし、あちらから殺気は飛んでこない。ナメられているのか。するとガサッと音を立て、茂みから人が出てくる。

その人物を見て俺は絶句した。



(110820)
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