「サースケくん!あーそびーましょ!」

外で自分を呼ぶ声がする。俺は読んでいた本を閉じ、台所にいる母さんの元へと走っていく。

「母さん、遊んできていい?」

「早めに帰ってくるのよ」

「うん、分かった!」

玄関まで全速力で走り、戸を開ける。そこには見慣れた友人が笑顔を浮かべて立っていた。

「よぉサスケ!今から鬼ごっこだ。私が鬼な!」

「えっ?急に?」

ゆっくりと数を数え始めた。とりあえず走り出してみる。後ろを振り返るとまだ数を数えていた。もう少し、距離をとっておくか…。

「いくぞーサスケェェ!」

遠くの方ではりきった声が聞こえる。俺は何だか楽しくなって笑みを溢しながら地を蹴った。

あれから走り疲れて歩いているのだが、なかなか追いかけてこない。あちらも走り疲れているのだろうか。

「何してんだなまえのやつ…」

「呼んだ?」

「うわあ!?」

ぬっ、となまえが現れた。そして俺の肩に軽く手を乗せる。にこりと笑顔。捕まってしまった。

「サスケが鬼。十数えてからね」

「年下には手加減してくれよ」

「まだまだガキだなサスケ。そんなんじゃ嫁にもらってやらないぞ」

「誰がなまえなんかに!」

しかも逆じゃないか。だとしてもなまえに嫁なんて言葉は似合わない。一生独り身タイプだなこいつ。
屈伸をしているなまえを横目にため息を吐いて数を数えようとした、

「…サスケ?」

アカデミー帰りの兄さんが歩いてきた。不思議そうに俺となまえを交互に見ている。ああ、そうか。兄さんにはまだなまえを紹介してなかった。

「おかえり兄さん。こっちの変なやつはなまえって言うんだ」

「え、サスケのお兄さん?初めまして。いつもサスケと仲良くさせていただいてます、なまえです」

姿勢と口調を正して丁寧にお辞儀をする。こいつこんなことできたのか。少し見直した。すると兄さんはああ、と思い出したように頷く。

「君がなまえくんか。よくサスケが話しているよ。仲良くしてくれてありがとう」

兄さんがにっこりと笑みをなまえに向ける。羨ましいな、なんて考えているとなまえが俺の服の裾をものすごい形相で引っ張ってきた。変なものでも食べたのか。

「…サスケサスケ!」

「なんだよ」

「サスケのお兄さんカッコいい!なんかオーラが出てる!」

目を輝かせながらなまえが言った。兄さんは笑っている。カッコいいなんて当たり前だ、自分の自慢の兄なのだから。俺は胸を張って答えた。

「当たり前だろ!俺の兄さんなんだからな!」

「いいなーサスケいいなー。…サスケのお兄さん、お名前は!?」

「イタチだ」

またなまえに笑いかける。多分、兄さんはアレだ。なまえを男と勘違いしている。さっきも君付けだったし。

「是非、イタチ兄さんと呼ばせてください!」

なまえが兄さんの手を両手で掴み、先程より一層目を輝かせながら言った。
本当に変なものでも食べたんじゃないのか。



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