引き離そうとしたが、どうやら無駄なようだ。隣に座っているこの娘は犯罪者である俺をかけがえのない人と言った。
…なまえは俺に昔と変わらず接してくれる。多分、冷たくあしらってもそれは変わらないだろう。
里の皆に恐れられサスケに憎まれるだけに生きると決めた。そこに救いなんて必要ない。そう思っていた。
だが、例外はあるようだ。
「すまない、なまえ。詫びと言ってはなんだが今度、甘味を馳走してやる」
「本当!?兄さん大好き!」
さっきまでの重い雰囲気が消え去る。勢いよくなまえが抱きついてきた。本当に大きくなった。最後に見たときはサスケと変わらないくらいだったのだが。
「一つ、忠告をしておこう」
俺から離れたなまえに言い聞かせる。昔からサスケ同様に愛していたなまえ。それはもう、目に入れても痛くないほどに。だからこれだけは不安で堪らない。
「小南がいるとはいえ、このアジトにはお前以外に女はいない」
「あ、それサソリさんも言ってた。気を付けるようにって。でもね兄さん、私はデイダラとサソリさんに男と勘違いされたくらいだよ?心配しなくても大丈夫だって」
鬼鮫や角都も勘違いしていると思うのだが。ああ、これだから年寄りは嫌なんだ。
「何かあってからでは遅いぞ」
「大丈夫。私、速さには自信あるから」
まさかここまで男の怖さを知らないとは。サスケは何をしていたんだ。我が弟ながら情けない。内心ため息を吐く。
そういえばそろそろ…だ。
「お前が思っているような奴等じゃないからな、暁は。…まぁ、この話はまた今度にしよう。なまえ、広間に行くぞ」
立ち上がり、座っているなまえに振り返る。彼女は意味が分からないというような顔をしていた。
「夕飯の時間だ」
なまえは勢いよく立ち上がった。
まだまだ子どもだな。
(110815)
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