明日は任務があるから早く寝なくてはいけないのに、興奮して眠れない。相方はデイダラで、「久々にお前と任務だな。明日はオイラの芸術に感嘆するがいい!うん」と悪そうな顔をしてさっさと就寝してしまった。
ベッドで横になって目を閉じていても眼球の置き場所や、これからの自分の人生について事細かに考えてしまって目は冴えるばかり。水でも飲めば睡魔を呼び込めないだろうかと部屋を出て、広間に向かった。
ドアを開けるとコートを脱いだイタチとリーダーがソファに座っている。私が入ってくる音が聞こえたのか、イタチが首を回してこちらに顔を向けた。
「眠れないのか」
優しい声色に心臓がひときわ大きく脈打つ。そのことを彼に悟られないように平然を装って適当に返事をする。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してコップに注いでいるとこちらへ近づいてくる足音がした。
「任務前に眠れないとは…まるで子どもだな」
声が降ってきた方を見上げるとリーダーがほんの少しだけ目を細めて私の頭の上に手を置いた。わし掴まれると一瞬身構えたが、彼の手のひらは髪の毛をくしゃくしゃと撫ぜただけだった。
「…リーダー、お願いがあるんだけど」
「何だ」
頭を撫でられたのはアカデミーのときに担任から褒めてもらったぐらいで長いことされたことがなかった。イタチといい、リーダーといい、いつも(他のメンバーと比べるとだが)甘やかしてくれる。犯罪者がこれでいいのかと問いただしたくなる。
「私の首あたりを、こう、ガツンと…」
「バカなこと言うな。こっちに来い」
「えっ、ちょっと」
殴って気絶させてもらえれば一番手っ取り早いと提案したのが即却下され、軽々と抱えられる。手足をバタつかせるもリーダーは涼しい顔をしてソファに向かって歩く。
「リーダーに担がれるとはまだまだだな」
手にしている本を閉じながら薄く笑うイタチの隣に降ろされる。その隣にリーダーが腰掛けた。緊急事態である。イタチとリーダーに挟まれてしまった。逃げ場はどこにもない。冷や汗が背中を伝う。
「あの、私明日任務だし。そろそろ寝ないと」
「眠れないんだろう?俺たちの相手でもどうだ」
リーダーがゆっくりと私の腰に手を回す。その手が思っていたより大きくて、顔に熱が集まってくる。続いてイタチが寄りかかってきた。男のくせにいい匂いがして更に顔が熱くなる。
「リーダー、やりすぎじゃないのか」
「お前も人のこと言えないだろう」
頭上で交わされる会話がじんわりと耳に響く。激しく脈打つ心臓の音が二人に聞かれているような気がしてならない。男二人に挟まれて密着されて身動きが取れないだなんてとんだ幸せ者と思われるかもしれないが、相手が相手。己を守るために頭を働かせるも良い案が出てこない。
隣でイタチが小さく笑うと、耳元に口を寄せてきた。
「期待しているかもしれないが、今日は何もしないぞ」
そう囁かれ、恥ずかしさと擽ったさで身を固めていると次はリーダーが首元に顔を近づけてきた。彼は首に軽く口付け、上目遣いで私の目を射抜くように見つめる。
「任務が終わるまでお預けだな」
低い声が脳にまで響いてきた。何をお預けされたのだろうか。考えたくもない。完全に目は冴え、今から眠りにつこうなど不可能である。もちろん、この二人の視線から逃れることも。
「心配かけてごめんなさい、明日早いからそろそろ寝るね。お土産買ってくるから」
隙をみて立ち上がろうと足に力を入れた時、イタチの片足が私の膝に乗せられた。
「愛弟子が眠るまで俺が羊を数えてやろう」
頬に手を当てられ、振り払おうとしたがリーダーに手を掴まれた。
「俺も数えてやる」
生き地獄とはこのことか。
この後、偶然広間に入ってきたサソリさんに助けてもらった。彼曰く、「大の大人が寄ってたかって年頃の娘をいじめるな」だ。私の何かが確実に守られた。
(150604)