「最近、旦那の機嫌が悪い」

芸術コンビの片割れがため息を吐きながら切り出した。因みにサソリは傀儡のメンテナンス中に手を滑らせ、洗濯し干していたリーダーのマントをビリビリにしてしまったため、現在リーダーからの制裁を受けている。
制裁というより壮絶な戦闘だ。これは中々見れないと思い、私とデイダラは先ほどから二人の戦いを見物している。

「お前、機嫌が悪いときの旦那の恐ろしさ知らねーの?」

「寝起きは最悪だよね」

「いや、そーじゃなくて…うおっ!?」

デイダラの足元にヒルコの尾が伸びてきて床に突き刺さる。いつもと違う毒なのか、みるみる床が溶けていく。

「余計なこと言ってんじゃねえよガキ」

ぎろり、と睨まれるデイダラ。しかし彼は怯まず、さっきより深いため息を吐いた。

「なぁ、オイラと一緒にいるのやめねぇか?うん」

「なんで?一番歳近いのはデイダラしかいなんだよ」

「それは…まぁ…うん」

歯切れが悪い。何が言いたいのだろうか。サソリの方を見れば本体が出ていた。リーダーが相手なのだから仕方がない。相変わらずすげえ体だなぁ、と感心しながらサソリを見ていた。
暫くしてピタリと二人の動きが止まる。

「次こんなことがあったら弁償してもらうからな」

「…チッ」

弁償、という言葉にサソリの表情が曇った。理由は嫌でも分かる。今月の暁の家計簿が真っ赤だからだ。
そもそも、あまりアジトにいないリーダーがここでマントを洗濯して干すという時点で間違っている。
そしてリーダーとサソリが戦うことも間違っている。どうしてこうも喧嘩っ早い連中ばっかりなんだ暁は。

「旦那、最近ずっと不機嫌だぞ。うん」

「ああ?これのどこが不機嫌なんだ」

「えっ、サソリ不機嫌なの?ダメだよ綺麗な顔が勿体無い。あ、デイダラも顔綺麗だから安心して」

「お前それ以上しゃべんな!旦那、毒刀しまえ!」

「気が向いたら解毒剤つくってやる」

「よっ!サソリ美中年!」

「煽んな馬鹿!喝!」

デイダラの言った通り、サソリは本当に機嫌が悪かった。
傀儡になっても嫉妬心は存在するのだろうか。



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