時計の針は深夜零時を指し、一月一日を迎える。新年だろうが何だろうが、私の幼馴染はというと相変わらず私のベッドでゴロゴロと寛いでいた。「凛月、あけましておめでと。」形式だけでもと言うと、「おめでと〜。」といつものぼんやりとした返事が返ってきた。

「凛月、着物合わせるからこっちきて。」
凛月は面倒そうに顔をしかめたけれど、夜だからか体は軽そうだった。お母さんが着付け師であることもあって、我が家には和服がぞろりと無駄に多い。今日という日に着ないでいつ着るのだ。
凛月用に用意していた紺色の着物を当てがう。「袖とおして。」「めんどい…。」「ほーら!」袖を通して見てみると、やはり私の見立て通りぴったり似合っていた。顔立ちも下手すると女子より綺麗なものだから、着物によく映えていて、腐ってもアイドルなんだなあ、とぼんやりと思う。

着物の襟先を持って腰に手を回すと、面倒で仏頂面だった凛月がにやりと笑った。
「どうしたの?」
「うーん、毎年思うけど、これ抱きしめられてるみたいじゃない?」
「な。」
ちっとも予想もしていなかった返答に喉が急に詰まる。せっかく合わせていた襟先から手を離してしまい、凛月は呑気に「あーあ。秋姫、崩しちゃった。」と言った。誰のせいだと思う。
もう一度やり直そうとするも、先程言われたことが意識されて中々し辛いものがある。しどろもどろに着付けをする私に、凛月は楽しそうだ。

「秋姫、早く着付けしてくれないの?」
「い、今やってるでしょ。」
「そんなんじゃおばさんにまだまだって言われるんじゃない?」
「いっつも言われてるわよ…。」
「それじゃ中々出来ないじゃん。ほら。」
凛月は私の腕を掴んで引き寄せる。着付けなんて毎年やっていることだし、いつも近くにいるくせに、こうも強引にこられると私は弱い。諦めて黙々と着付けをするも、顔も上げられそうになかった。
腰紐を結び終わり、やっとの思いで終わると凛月は満足そうな表情を浮かべていた。

「な、何なの。」
「ううん。秋姫は可愛いなあってね。」
お願いだから、そんな優しい顔しないでよ。思い立ったように慌てて「私も自分の晴れ着きてくる!」立つと、「着付けしよっか?」とにやにや笑って言うから顔を小さく叩いてやった。前途多難、あとで真緒に言いつけてやろう。


二人の明日はどっちだ。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -