「どうかしら。」
シャッと音を発てて試着室のカーテンを開けた昴ちゃんは、本当に綺麗だった。一気に店内の空気が 変わった気がする。ほら、皆が彼女を見ている。誰よりもこの服を着こなして軽くポーズを決める彼女は、本物のモデルみたいだ。
そんな昴ちゃんと一緒に買い物をしている自分はとんでもない贅沢者のような気がする。だけども何より嬉しくて、あたしは昴ちゃんのことが相当好きらしい。つくづ く基山は幸せ者だ。


「昴ちゃん似合ってる!」
「まあね。」
昴ちゃんはくるりと回ってみせたりして、こんなに似合っているというのに冷静に鏡を見つめていた。
あたしがもしこんなに似合っていたら、舞い上がってモデルにでもなってやるのに。そう思いながら彼女を見つめていたら、微笑まれて頭を撫でられた。「お客様、お似合いですー。」と労う店員にも目もくれず、彼女は「次いこうかしら。」と既に次の洋服を手にしていた。


「基山は、どんな服が好きなの?」
聞くと、昴ちゃんはきょとんと目を丸くさせた。暫く黙ってから、「知らないわ。」とただ一言漏らし、実に不思議そうな表情を浮かべていた。
「どうして私がヒロトの好みを?」 「え、だって好きな人の好みって、気にならない?」

そう言うと、今度は昴ちゃんは笑った。あれ、変なこと言ったか、と首を傾げると彼女は笑いながらあたしの頭に手を置いた。
「どうして私がヒロトに合わせなくちゃいけないのよ。」
私は私。そう言う彼女は相変わらずで、ですよねー、と今度は私が笑ってしまった。多分基山もこういう彼女だから好きなのだろう。
「基山も、昴ちゃんだったら何でもうれしいと思う。」そう言ったら、昴ちゃんは「当然。」と高らかに笑った。そう笑う彼女は今まで見てきたどの彼女よりも、それはそれは綺麗だった。昴ちゃんも、ちゃんと基山が好きなのだろう。これは基山も苦労するな。だけれどもこんな彼女をもって、苦労なんてしてもしきれないだろう。少しだけいい気味だ。


「何、美桜ちゃんは半田の好みが気になるの。」
あまりに図星すぎてハンガーを落してしまった。そんなあたしに 昴ちゃんはまた笑った。あたしの思考なんて単純そのものだ。
「…わ、悪い?」
顔中に一気に熱が集まってくるのを感じた。本当にあたしはつくづく馬鹿だ。
そんなあたしに彼女は、「美桜ちゃんだったら、半田は何着ててもうれしいと思うわよ。」と先ほどのあたしの言葉を真似てみせた。

「だと、いいな。」
基山が昴ちゃんに感じているように、同じように半田も思ってくれていたら、と何とも図々しいことを考えてしまった。そんな浅はかなあたしを昴ちゃんは優しく笑ってくれた。

「次はあれ着るわよ!」
やっぱり基山は贅沢者だ。昴ちゃんを彼女にもらって、 一生苦労でもすればいい。そう考えていたら、大人になっても彼女に振り回される基山が浮かんで、笑ってしまった。


「半田なんて、どれでもいいわよ」
「昴ちゃん!」
「ほら、乳でも出しておけば一発じゃない?免疫なさそうだし。 」
「ち、乳…昴姉さん、乳がない場合はどうすれば」
「脚!脚で勝負よ、美桜ちゃん!」




inzm/昴ちゃん(むう宅)、美桜
昴ちゃんお借りしました
昴ちゃんくそかわいい


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