よく、目が合う気がする。それは俺の気のせいかもしれないけれど、間宮は俺の方をよく見ているような気がしてならない。だけども俺が彼女を見ると、すぐに目を逸らされてしまう。話をする時も、何だか素っ気ないし、何より俺を見る彼女は、何故だかいつも泣きそうな顔をしていたのだ。
他の奴に聞いても、間宮は普通らしいし、俺の前でだけだ。寧ろ可愛いよな、とか言い出す奴まで出てきた。そうか?間宮は俺が言えたことじゃないけど、普通の奴だと思う。だけども、よく分からないけれども、他の奴が間宮を良く言うのは何かむかついた。よく分からないけど。
俺は、嫌われてるのか。何かしたっけか。不安になりながら水を飲みに行くと、タオルを差し出された。顔を見ると、間宮だった。


「練 習、お疲れさま。」
ちょうど間宮のことを考えていたものだから、驚いて水を吹き出しそうになってしまった。「あ、りがと」慌てたから器官に水がむせて咳き込む。やばい、かっこ悪い俺。

「は、半田、大丈夫?」
「あ、あ。平気。」

間宮は隣で、何か足元を見下ろしてぎこちなくしてみせた。訪れる沈黙に、俺は必死に話題を探そうとしていた。何してるんだ。だけども、隣にいる間宮を見たら、いてもたってもいられなかった。


「間宮は、さ。サッカー、好きなの?」
やばい、いきなり何を聞いているんだ俺は。俺の突然の質問に、間宮はきょとん、と目を丸くさせた。「ごめん、今の、なし。」慌てて撤回するも、間宮は少し黙ってから続けた。


「…あ たしの幼なじみが、サッカーがすごい、好きでね。」
「そう、なんだ。」
「あたしも、サッカー、教えてもらったの。」

驚いた。間宮がサッカーをやるなんて初耳だ。間宮は地面を蹴ってみせた。
だけども間宮の細い脚がボールを蹴ることが可能なのか、想像できなかった。折れてしまうのではないだろうか。って何を心配しているんだ俺は。


「…あたしには、才能なかったんだけど。」
「…そ、か」
「だから皆がすごい、なあって思う。かっこいいなあ、って。」
「そうか?俺なんて、まだ全然だし」
「は、半田はかっこいいよ!」

今までもじもじとしていた間宮がいきなり力強くそう言ったものだから、俺はまた咳き込みそうになってしまった。かっこいいって、初めて言われたかもしれない。顔が、熱い。一方間宮も同じように顔を赤くしていた。「あれ、あ、あたし何言ってんだろ」「い、や、うん。大丈夫」何故だか上手く間宮の方が見れない。どうしてだ。

「…うん、だから、あたしは好きだよ。だいすき。」

勿論、間宮はサッカーのことを言っていたのだけれども、何故だか俺は不意に胸をつかれた。
隣で可愛らしく笑う間宮を見たら、何かに落ちた気がした。やばい、これは。何故だか酷くときめいてしまった。だって、間宮があんな顔で笑うなんて、知らなかった。思わずタオルを落としてしまった俺に、間宮は不思議そうな表情を浮かべる。「半田?」名前を呼ばれただけでも、顔が熱い。


「な、んでもない!」
慌てて練習に戻ろうと駆け出した俺に、「がんばってね、」とぎこちない小さな声が聞こえた。本当に小さな声だったのだけども、ちゃんと、聞こえた。
振り返ってこっそりもう一度間宮を見たら、同じようにして笑いながら木戸とかと話していた。胸の辺りが少し、痛む。

何故だか分からないけれども、あの笑った顔が可愛いのとか、全部、俺だけが知っていたらいいのに、と思ってしまった。高鳴る鼓動に、上手く走れない。いや、これも全部、あんな顔で笑う間宮が悪い。自分でも何言ってるかよく分からないけど。




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