「…美冬は、何で風丸がすきなの?」


ふと疑問に思って口にしてみたら美冬は急に顔を真っ赤にしてみせた。あたふたと取り乱す彼女は本当に可愛い。
「ええ?!一朗太は、そんなんじゃ、ないもん…」
あたしが更に、本当?と聞くと、美冬は俯いてしまう。それから、彼女は暫く黙って遠くの風丸を見つめながら、ぽつりぽつり、と言葉を落としていった。風丸は、相変わらず綺麗に走って いた。

「…分からない。」
風丸を見る彼女の瞳はまさに恋する女の子のそれで、今まで見てきた美冬の中で一番可愛かった。

「…いちは、ずっと一緒にいて、私の…大切な人でね。」
「う ん」
「理由なんて、ね。ないと思う。ただ、大切なの。ずっと。」


顔を赤らめながら言う美冬の表情は本当に可愛くて、何だか見ているだけでも息がつまりそうになってしまった。きっと風丸はこんな表情を見たらたまらないだろうな、と考えたら笑ってしまう。きっと彼は美冬がこの表情を自分の前以外でするのが、不安で仕方がないのだろう。

「…うん、そっか。」下手くそに相槌を打つと、今度は美冬が 聞いてきた。
「美桜ちゃんは、どうして半田がすき、なの?」


この流れは想像していなくて、え!と大きく声をあげてしまった。遠くで練習をしていた半田がこちらを見た気がする。急に顔 中に熱が込み上げてきた。


「は、半田はそんなんじゃ…」と口にしてから、美冬が少しだけ笑った。「それ、さっきの私と 反応一緒、だよ。」言われてから気付いて、美冬につられて笑ってしまった。


「…あたしも、分からない、の。は、半田なんて、普通だし。」
確かに、聞かれたって分からなかった。半田なんて、言ってしまえば本当に普通だし、豪炎寺だとか鬼道みたいに目立つわけじゃない。
「だけど、気が付けば半田が、あたしの中で残ってて。と、隣にいたいって。」
だけども、彼を見るだけでどうしても胸がつまりそうになる。半田。 彼の名を口にするだけでも本当に勇気が要った。
美冬は黙って聞いてくれていて、「…うん。一緒。」と優しく 言ってくれた。二人で顔を見合わせて笑った。恋する女の子というものは、皆似ているものなのかもしれない。あたしも彼女みたいに可愛くなれたのならいいのにな、と思ってしまった。


「風丸に今のこと、言えばいいのに。」ぽつりと呟けば、「美桜ちゃんも、ね?」と言われて、また二人で笑ってしまった。 グラウンドを見れば風丸と半田がこちらを見ているような、気がした。次に彼らの前で話すときは、今よりも素直になれたらいいね。そう言うと、美冬は天使みたいな顔をして微笑んだ。風丸も、彼女を想って不安になっているのだろう。半田もそうだといいのに、と図々しいことを願わずにはいられなかった。ふと、彼らに名前を呼ばれた気がした。あたし達の、大切な人。彼らの蹴るボールは今日も綺麗な弧を描いて浮かぶ。




inzm/美冬ちゃん(央たん宅)、美桜
美冬ちゃんお借りしました

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