助けを求めるようにして不安げに潤んでいた真木緒の目はしっかり閉じられ、頬がピンク色に染まっていた。最初の方はタツヤと何回も目が合っていた。今は、スマホの方を見ようともしない。ただ、聞こえてくるのは甘い喘ぎ声。

「あっ、あっあ、あ、ああっ……ちくび、やめて……そこは、たっちゃんだけの所で……あっ! ああんっ!」
「たっちゃんだけの所なのに、他の男に触られてあんあん言うんだ? ねえ、ここ今どうなってるかタツヤに教えてあげてよ」
「あっ、あ……ちんちんハメられながら、ちくび引っかかれてる……ぷにぷに、くにくにってされてぇ…………あんっ! 今、舐められて、ちゅっちゅって吸われて、舌でいじめられて、かりかり噛まれてりゅ……!」

 定点カメラの隙間から、真木緒の顔が見えた。ようやくタツヤと真木緒は目があった。困ったみたいな、嬉しそうな、よく分からない顔をしていた。伝わるのは快楽。
 他の男にねじふせられて、愛おし気に抱きついて無意識のうちに腰を動かしている。真木緒は乳首が弱い。意外と強く噛まれるのが好き。そんな恋人同士でしか知りえない秘密を、他人にさらけだしている。
 真木緒の浅ましい姿からタツヤは目をそらした。しかし性器はかつてないほどに勃起しており、心は高揚している。心臓はどくどくと鳴り、血が頭に昇って性器に巡る。
 ふと、亮が動きを止めた。ゆっくりと腰を動かして性器を抜く。

「あぇ……え、なんで……?」

 ぱちん、とゴムをはじく音がして、ぽい、と真木緒のお腹に何かが投げられる。我慢汁しか入っていないコンドームだ。

「ゴムなしの方が気持ちいいじゃん? ナマでさせてよ、真木緒くん」
「え! え、えっ、だめ! 絶対だめ! な、な、ナカだしは、たっちゃんともしたことないから……えっ、えぁ! あっ、あああああっ!」

 いつも真木緒はタツヤとは安全な性行為しかしたことがなかった。病気の検査を定期的にして、コンドームをつけて、きちんと行われるセーフティセックス。亮はそんなのおかまいなしで、真木緒のナカに無許可で性器を挿入した。

「やっ! いや! やだやだやだっ! やめて! いやだ!」
「あー、やっぱナマは全然違うな。真木緒くんの好きな所、いっぱいこすってあげるね」
「あああああっ! いや! いやあ……あ゛っ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 初めての感触。内壁をこすりあげられて、ダイレクトに前立腺を突かれる。その生々しさ。一ミリにも満たない薄皮がないだけで、全然違った。
 真木緒の口から今まで出た事もないような野太い喘ぎ声が出る。タツヤは性器をしごきながらもスマホの画面から目が離せない。

「お゛っ、お゛くっ! 奥に当たってるっ! ん゛っ、んあっ、おっ、お゛っ!」

 体勢を変えて、四つん這いになる。獣みたいな恰好になることで、よりピンポイントに気持ちのいい所に当たるのか、真木緒がいよいよ汚い喘ぎ声を漏らす。

「すげぇ声だすね……なんか真木緒くんぽっちゃりしてるし、豚みたい……真似してみてよ」
「あっ、あっ、そ、そんな、ひどい……あああん! あっ、なんでぇ!」

 腰をがっしりつかんで力強く行われていたピストンが、急に止まった。真木緒がゆるく腰を動かす。だが、亮は動きを止めたまま。その言わんとすることは……子どもだって分かるだろう。
 真木緒は汗だくになりながら、唇を噛む。お尻をぷりぷりと振る。

「…………ぶ、ぶぅ……あ、あっ、あのっ、お、おちんぽ……ください……ぶう」
「やっべ! マジやべえ! ねえ、見た? 真木緒くんはね、口ではタツヤだけとか言ってるくせに、ちんぽ欲しくて豚の真似するんだよ……!」

 亮は心なしか嬉しそうだった。そしてひどく楽しそうに笑った。
 タツヤは胸が苦しい。しかし、それ以上に性器がギンギンに勃起して今までにないくらい熱く硬くたぎっていた。恋人がひどい扱いをされているのに、大好きなのに、どうしようもなく興奮している。
 ばちん、と亮が真木緒のお尻を叩いた。そして、定点カメラを指さす。

「じゃあさ、あそこまで四つん這いになって進んで。ハメる所、タツヤにもっと見せてあげようね?」
「ああああっ、いやっ、いや、いや……で、でもっ、でもっ、どうしよう……エッチしたい。入れてほしい……むずむずする……ごめん、ごめんね、たっちゃん……ごめん……!」

 真木緒の目から涙がこぼれる。ずっと我慢していた。恋人と一緒にゆっくり開発してきた身体は、一度覚えた快楽をずっと欲していた。何とか玩具で慰めたり、手でしてもらったり。それでも身体は絶対に最後まで満たされなかった。
 何らかの精神的ストレスによる機能的ED。治療には薬を飲んだり長期の通院が必要。心因的なモノが何なのかは不明。だが、タツヤ自ら『真木緒が誰か他の男に抱かれてる所を見たら、勃つかもしれない……』と言ってきたこと。本当はタツヤとだけしたい。そんな気持ちを押し殺して、ずっと考えて……ようやく真木緒は決めた。
 四つん這いになって床を進む。お尻をふりふりと振りながら。一歩進むごとに性器がぷるんと揺れて、はしたなく床を濡らす。

「ほら、鳴きまね続けて」
「………………ぶぅ、ぶ…………うっ、ぅ、ううう…………うううう、うっ、うう……」
「あーあ、泣いちゃった!」

 楽しそうに意地悪なことを言われる。亮はまるでいじめっ子みたいだった。これもタツヤの指定なんだろうか、真木緒はそう思いながら鼻をすする。涙がぼたぼたと頬を伝う。
 スマホが固定してある場所に着いた。真木緒は顔を上げる。不安げな顔のタツヤが映っていた。

『真木緒……ごめん、泣かせて……こんなことさせて、ごめん……!』
「っぐ、ひぐっ、たっちゃん……うぅ……っく、ひっく、たっちゃん。たっちゃん……たっちゃん、ぼくのこと、きらいにならないで…………おねがい……」
『嫌いになんてならない! 好き、大好きだよ、真木緒』
「う……うっ……たっちゃん。たっちゃん……ぼくも、す…………あああああっ!」

 好き。真木緒が最後まで言い切る前に、亮が性器を体内に挿入した。柔らかな内壁を無理やり押し拡げながら奥へ奥へと、力強く。


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