亮が仰向けに寝転がる。真木緒は何も答えないまま、股間に顔を埋めた。天を堂々と仰ぐ性器をそっと舐めた。ぺろぺろ、とアイスを舐めるみたいにして。いつも綺麗に洗って清潔にしてあるタツヤの性器とは全然違う味がした。ほんのりとしたせっけんの香りしか知らない真木緒は戸惑いながら、おそるおそる口に咥えた。
「ンッ……んぢゅ、ぢゅっ、ん゛……」
歯を立てないようにして口の粘膜で性器を包み込む。顔を上下に動かす。極力何も考えないようにして、機械的に。しばらくそうしていると、不意に頭を掴まれて強い力で性器に顔を押しつけられる。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ! ん゛ーっ!」
喉の奥、入ったことのない所に性器が出し入れされる。
「だめ。全然気持ちよくない。へたくそなんだからさあ、もっと真剣にやってよ」
優しい恋人が絶対にやらない事。顔を上下に動かされて、無理矢理行われるイラマチオ。苦しい。息ができない。しかし身体より精神的な苦痛の方が大きかった。
真木緒はあんまり口淫が好きではない。でもタツヤが喜んでくれるからなるべく積極的にやっている。真木緒にとってのそれは、頭を撫でてもらって『上手だね、気持ちいい』などと褒められながら行うもの。違う。全然、違う。
ぐっぽ、ぐっぽといやらしい音が響き、性器が喉の奥の柔らかな粘膜を突く。唾液がこぼれて、とろとろとした粘膜が分泌される。舌で押し出そうとして、まるで舐めまわしているようになってしまう。
「はぁ……もういいや。そろそろ突っこむね」
亮は全然満足できずに飽きてしまったのか大きくため息をついた。どこまでも雑。ただの性欲処理。物みたいな扱いだった。
真木緒は泣きそうになりながらも、ベッドにうつぶせになってお尻を高くあげる。亮の顔を見たくなかったからだ。
亮は何も言わずにスマホで局部を映す。ひくひくと蠢く所、恥ずかしい所をよく知らない男に撮影されている。心が壊れそうだった。しかし、必死にタツヤの顔を思い出して何とか耐える。
亮の慣らし方は丁寧だった。ローションで一応ほぐしておいたが、それでも指をいれてもう少し柔らかくなるようにかき回す。ヤリ慣れているんだ、真木緒はそう思いながら枕をぎゅっと掴む。ぷに、と亀頭の先端がお尻の谷間に当てられる。
「あ、タツヤ。見える? 今からつっこむね」
「え……?」
思わず顔を上げた。亮はスマホをかまえて真木緒の身体を撮影していた。その画面に映るのは、いつもの見慣れた部屋。そして頬を赤く染めたタツヤだ。
「た、たっちゃん……見てるの……?」
『うん……ビデオ通話で……真木緒のほっぺたが叩かれた所から見始めた……』
ほぼ最初からだった。真木緒の顔色がどんどん青ざめていく。
「いや! 見ないで……ねえ、こんなのやだ……やだ、やっ! やぁあああ!」
亮は枕にスマホを置いて、真木緒とタツヤが向かい合わせに映るようにした。目に涙をためた真木緒の顔が、驚きひきつり、真っ赤に染まっていく。
亮がコンドームをつけて、真木緒のナカに挿入した。ローションでぬめる体内、まずは優しく前立腺をこすりあげられる。
「た、たっちゃんっ! あっ、あっ、ど、どうしよ……」
『真木緒……! 今、何されてる?』
「四つん這いになって、後ろから……あん! あああああっ! ぐ、ぐちゅぐちゅされてるっ!」
タツヤに状況を説明しているのに、おかまいなしに後ろから何度も荒々しく貫かれた。激しく出し入れされるたびに、ひだひだがいやらしくめくれあがる。ローションが溢れてきて、シーツをぐっしょりと濡らす。真木緒は大きめのお尻をクネらせて、催促するように押しつけてしまう。
すごい、すごい、すごいっ!
犬みたいに舌を突き出して、よだれをだらだらと垂らす。先ほどの嫌悪感にあふれた泣き出しそうな表情が嘘みたいな、ヨガリ顔。他の男に犯されてアヘっているはしたない顔を、世界で一番大好きな彼氏に見られている。
ぞくぞくとした。それ以上に不安で怖くて悲しい。そんな気持ちとは裏腹に、真木緒の口からは絶えず喘ぎが漏れる。亮はいいところに当てるのが上手だった。前立腺を突かれるたびに、はしたなく真木緒は声を上げてしまう。
「あっ、あっ、あっ、あっ! あああっ、すごいっ、あたってる!」
腰が痛いほどに掴まれて乱暴に性器を押しつけられる。大好きな彼氏とは全然違うセックス。温かくて柔らかくてふわふわの幸せなエッチが……熱くて荒々しくて即物的なただの性処理として塗り替えられていく。
真木緒はとろけそうな顔で、それでもタツヤに助けを求める。
「あっ、ああっ、あひっ! いやあ、いやっ、たっちゃん、たすけて……たすけてっ!」
「助けて? 合意でヤッてるじゃん」
「だめ、だって、きもちいぃいいい! こんなのしらない!」