妻番号は九番です




 
 
 
「ん?見かけぬ顔じゃな」

『恐れながら、以前見合いをした九番目の妻でございます』

「ああ、そういえば」



皆さん、こんにちは。



脇役街道一直線の、いろはです。



九人も妻がいれば、混乱して一人や二人くらいは忘れても仕方ない。



と、思っていましたが、私以外はしっかりと顔も名前も記憶されていました。



どこへ行こうが、安定の脇役っぷりないろはでした。



このモブタケ城の城主と若様は、非常に女癖がよろしくない。



若様はご覧の通り、私を含めた九人の妻がいます。



裏では女収集家と呼ばれており、様々なタイプの妻を娶っているのです。



それは美し過ぎる妻だったり、お世辞でも綺麗と言えない妻だったり、ふくよか過ぎる妻だったり、老婆な妻だったりと、多種多様である。



おそらく、若様は私の脇役っぷりを気に入られたのだと思います。凡愚とか言ってましたし。



モブタケ城の城主に至っては、美人な南蛮人を買い漁っているそうです。つまり人身売買ですね。



そんな中、城内を散歩という名目で構造を暗記していたら、前方から歩いて来る若様の隣に見たことがない女性がいました。



『若様、ご機嫌麗しゅうございます』

「うむ」



若様は、チラリとこちらを見ただけで、その女性とどこかへ去って行く。



すれ違い様の「やはり人妻は妙な色気があるのう」という台詞は、聞かなかったことにしたい。



それにしても、











(ここの若様は、まだ娶るのか)



 




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