ざっと、そんなもんかな
「いろはちゃーん、羊羹買って来たから食べよー」
そうお呼びがかかったのが先程。
脇役の私なんかが食べてもいいのだろうかというくらい高級感溢れる羊羹を目の前に、手を出せず数分が過ぎた。
「どうしたの?遠慮せずに食べていいんだよ尊奈門の奢りだから」
余計食べづらくなりました。
「くそっ!土井半助くそっ!」
ああ、なるほど。
おそらく「今回は絶対勝ちます!」などという宣言をしたのでしょうが、結局土井先生にも雑渡さんとの賭けにも負けたんですね。
諸泉さんにはいつもお世話になってますし、やっぱり後輩として何か声をかけた方がいいのでしょうか。
『あの、諸泉さん』
「……何だいろは」
『土井先生の件ですが、諸泉さんですしそんなもんじゃないでしょうか』
「うぐぐっ……!!」
「いろはちゃん言うねー」
『?』
雑渡さんは楽しそうだが、諸泉さんは若干泣いている。
とにかく食べなよ雑渡さんに勧められ、諸泉さんからも食べてくれと言われたので、お言葉に甘えていただくことにしました。
一口食べて、思わず目を見開いた。上品な甘さと優しい口どけ、脇役の私なんかが説明出来ないほど美味なこの羊羹はやはり高級品のようです。
お茶をこくりと飲みながら雑渡さんと諸泉さんの談笑を聞いていると、ちらりと自分が座っている座布団の横に目がいった。
あ、そうでした。
私はこの次に担当する任務の計画書を提出しに来たんでした。
『雑渡さんすいません、これ次に向かう任務の計画書です。どうやらこの通路の守りが薄いようなので、私の計画ではざっとこんな感じなのですが如何でしょうか?』
談笑中すいませんと頭を下げるが、雑渡さんと諸泉さんが微妙な表情でこちらに振り向いた。
「ちょっといろはちゃん。そこは“こんなもん”でしょ」
『はい?』
どういう意味でしょう。雑渡さんの名前なら存じているんですが。
『雑渡さんがどうかしましたか?』
「もう何なの。こんなに焦らさせるなんていろはちゃん策士?」
『はあ』
とりあえず、計画書は通りました。
(いろは、俺の時だけ……)
(諸泉さんどうしました?)
(ズルい私も言って欲しい)
(???)
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