サインですかそうですか
「くっ……!もう組頭!帰りますよ!!」
何故か悔しそうな諸泉さんが現れた。まあ、負けたんでしょうね所詮諸泉さんですし。
「尊奈門また負けたの?」
雑渡さんが呆れたようにため息を吐く。どうやら毎度のことらしい。
「今日は負けてません!授業中だからって普通に追い返されたんです!ちょっと迷惑そうな顔で!!」
それはそうですよ。授業中ですから。
「あはは……、今は授業中ですから仕方ありませんよ」
善法寺先輩も苦笑いである。
「尊奈門はいろはちゃんの先輩でしょ?良いとこ見せなきゃ駄目じゃないの、ねえ?」
『いえ、良いところがなくても諸泉さんは先輩ですから』
「ぐっ………、」
何故か若干涙目の諸泉さん。まあ、勝負出来なかったのが余程悔しいんでしょうね。でも所詮は負け戦なんでしょうけど。諸泉さんですし。
『ところで雑渡さん、諸泉さんはどなたに勝負を挑んでらっしゃるんですか?』
「土井先生だよ」
『土井先生、ですか。諸泉さんとは接点がなさそうですが』
「あ、えっと、確か以前、土井先生のチョークと出席簿に負けてしまったらしくて」
『善法寺先輩はお詳しいんですね』
「え、いや、結構有名だし」
なるほど、どうやら私は善法寺先輩という主要人物に会って調子に乗っていたようです。そうでしたね脇役などが知る話ではないですね脇役がでしゃばってすいません。
『それにしても、諸泉さんはチョークと出席簿に負ける程度なんですね。諸泉さんの新たな一面を知ることができましたありがとうございます』
「うぐっ………、」
何故か今にも泣き出しそうな諸泉さん。やはり、チョークと出席簿に負けるのは悔しいんでしょうね。一応これでもプロの忍者ですし。諸泉さんには新人教育で随分とお世話になりましたし、こう、元気の出る言葉をかけて差し上げたいですね。
『あの、諸泉さん』
「……何だよ」
私は、涙目の諸泉の目をじっと見つめながら口を開いた。
『気にしないで下さい。所詮、諸泉さんだからそんなもんですよ』
「うっ、うわあああああんっ!」
「安心しなよ尊奈門。いずれ病みつきになるから」
「なりたくないですよ!!」
「そろそろバレてそうだから帰ろっか」
『わかりました』
「ちょっと組頭!!いろは!!」
『それでは善法寺先輩、大変長らくお邪魔致しました』
「あ、うん……」
何故かついに泣き出した諸泉さんを引き連れ、私達は医務室を後にした。
まあ勿論、小松田さんには見つかりました。
(出門票にサインお願いしまぁ〜す)
(あ、はい)
(あれ?また任務?大変だねぇ)
(あ、はあ、)
安定の門番、小松田
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