五、六年生合同実習(2/2)




 
 
 
作戦は順調だ。もう少し騒ぎを起こしてから撤退しよう。これだけ時間を稼げれば、巻物は奪えているだろう。



先鋒組は、比較的優秀な奴らが集まっている。五年い組の久々知や五年ろ組の鉢屋、六年はろ組の長次とい組の文次郎だ。



認めたくはないが、文次郎はい組なだけに優秀だ。認めたくはないがな。長次も隠密行動などは意外と得意だし、変わり者だが才が溢れている鉢屋に、豆腐が絡むと少しおかしいが久々知も優秀である。



この任務、楽勝だな。



……それにしても、何故こんな巻物を奪うだけの簡単な任務に五・六年生全員を出動させたのだろう。



しかも、任務が成功すれば夏休みが倍だなんて………



「おい留三郎、なんか変だぞ」



かく乱組である七松小平太が、俺が潜んでいた木の枝へと現れた。



「どういうことだ?」

「うーん、確かに兵たちは計画通りに私たちを追ってるが、だんだん人数が減ってるんだ」



確かに、最初の頃より減っている。



「まさか、作戦がバレたのか」



この城はそこまで賢い人材はいない。それ以前に、先鋒組の奴らがヘマをする訳が……







「うぎゃあああぁぁあっ!!」
「うわぁぁあああああっ!!」



突然聞こえた叫び声、



この声には聞き覚えがある。



「おい留三郎!」

「ああ!竹谷と不破の声だ!」



あの二人が、そうそうやられるような柔な奴らじゃない事は知っている。



俺と小平太が声のした方へ向かうと、とんでもない光景が目に入った。





「……………え」
「……………え」





そこには、亀甲縛りにされ気を失っている先鋒組と、先ほどの声の主である竹谷と不破が、ズルズルと縄で犬の散歩のように引きずられていた。



『お、みっけー!』



あの七人目の天女、坂田銀千代に。



そして、俺の直感が働いた。





これは、マズいぞ、と。










* * *










 
「……遅いな」

「うん、それに何か静かだ」



援護組である六年い組の立花仙蔵と僕は、木の上から城の方を眺めていた。



「何か、あったんでしょうか」



隣の木にいる五年い組の尾浜勘右衛門が、少し不安げに城を見つめていた。



「大丈夫だよ尾浜。あの城には手練れの忍者や兵士たちはいないよ」



僕は尾浜を安心させるように、優しく微笑んだ。



言っては悪いが、あの城には雑魚しかいない。



もし手こずっているというのなら、急遽腕の立つ用心棒か何かを雇ったのだろうか。



「ふむ、やはり何か変だな。……伊作、尾浜、少し偵察に行ってくる」

「わかった」

「お気をつけて」



仙蔵と共に一度地面に降りると、どこからかズルズルと何かを引きずる音が聞こえてきた。



「………何の音だ」

「わからない、」



僕たちが周囲を警戒していると、前方に人影が見えてきた。



さらに警戒を強めた瞬間、気の抜けた声が響いた。



『あ、いたいたー。探したよ不作君』



そこへ現れたのは、ここにいる筈のない人物、お銀さんだった。



「え!お銀さん?!ってうわぁ!みんなが!!」



お銀さんの手に握られた数本の縄の先を辿ると、先鋒組とかく乱組の八人がボコボコで亀甲縛りにされて気を失っていた。



……嘘でしょ、



「銀千代さん、えっと、その忍たまたちは?」



仙蔵が作った笑みで、お銀さんに問い掛ける。



するとお銀さんは、いつものように憎たらしくニヤリと笑った。



『こっちも依頼でね?キミ達全員をとっ捕まえたら、饅頭名人の饅頭を食えるわけよ』



それを聞いて、悟った。



これはマズい。



かなりマズい。



甘味が絡むと、お銀さんは容赦がない。


 
どうする!一体どうすれば……



そ、そうだ!イチかバチか!



「お銀さん!」



僕は賭けに出た。



「もし見逃してくれたら、この実習組全員で甘味を好きなだけ奢ります!」

『なん、だと…!』



ぐっ、とお銀さんがたじろいだ。よし、掛かった!恐らく甘味絡みだとお銀さんには絶対勝てない。あとは二人が僕に合わせてくれれば……



「どうだ?悪くない話だろう?我々全員だから、かなりの量になるはずだ」

「お銀さん、俺は甘味屋に詳しいから、美味しい所教えます!」



いい感じだ!あと一押しだ!



「日替わりで十一人が甘味を奢ります。だから巻物を」

『あのね?』



僕の言葉を遮るように、お銀さんが喋り始めた。



『キミ達があたしに甘味を奢りたいって事はわかったよ』



ん?なんか意味が違うような……



『けどね、こちとらお仕事してるわけよ。万事屋お銀ちゃんは仕事の成功率百パーセントなわけよ』



駄目だ、これ失敗だ!



お銀さんが、意外にちゃんとしてるって事はわかったけど、この作戦失敗だ!



『それになァ、』



お銀さんが腰の木刀を握った。



『世の中量より質に決まってんだろボケェェェェエッ!!!』



そして、僕たちは気を失った。



意識が途絶える間際、お銀さんが「あ、ちゃんと甘味奢ってね」と言っていたのは気のせいだと思いたい。



ああ、通りで学園長先生が、成功したら夏休み倍とか言うわけだ。















攻略法がなかった任務の話


(学園長さん、足りない)
(しかしこの饅頭は数量限定で……)
(あのね学園長さん、
質が良くても量がなきゃダメっしょ)


量より質だけど、結局は量も必要





――――――――――――

お粗末様です(・∀・)
キリ番リクエストの
面クサ番外編でした(^^)

遅くなってすいません!

 







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