五、六年生合同実習(1/2)
とある城の巻物を奪うこと。
それが我ら、忍たま上級生に課せられた任務だ。
六年生六人、五年生五人の十一人で行う合同実習。
先鋒組四人、かく乱組四人、援護組三人の三つのグループ構成で進めていく作戦である。
現在、援護組である善法寺伊作、立花仙蔵、尾浜勘右衛門は、城から少し離れた場所で待機している。
かく乱組である七松小平太、食満留三郎、竹谷八左ヱ門、不破雷蔵は、目立つように敷地内に侵入し、騒ぎを起こしている。
この騒ぎに乗じて、先鋒組の潮江文次郎、中在家長次、久々知兵助、そしてこの私、鉢屋三郎が巻物を奪うため城内へと侵入していた。
「(巻物のある部屋はこの先だな)」
「(我々の手に掛かれば、巻物の一つや二つなど簡単ですよ)」
「(………鉢屋、油断は禁物)」
「(先輩、巻物の部屋に着きましたよ)」
矢羽根で会話しながら天井裏を移動していた私たちは、ようやく目的地に辿り着いた。
いくら、かく乱組が騒ぎを起こそうが、慎重に任務を遂行しなくてはならない。
だが、慎重といっても速やかに。ちんたら行動していたら、敵に気付かれてしまう。
私たちは、音を立てずに天井を外した。
「(なっ!?あっあいつ!!)」
「(お銀さんがいるのだ)」
まさか、五・六年生が全員で任務をする理由は……!
そう、学園長は、坂田銀千代を城の用心棒として潜入させていたのだ。
* * *
「ふん、貴様が用心棒というわけか、坂田銀千代」
巻物を守っているのが、現在の天女である坂田銀千代と知り、真っ先に天井裏から降り立つ潮江先輩。
『やっと来やがったか、ちょっと遅いんでない?忍たま君』
「………もそ、用心棒か」
「所詮はこの女も天女、さっさと済ませるぞ」
ニヤリと品のない笑みを浮かべる坂田銀千代。相変わらず腹立たしい。
しかし、油断ならない。
なにしろ、相手はこの女。
今まで、どれだけ私がこの女に害を加えられたと思っている。
まだこの女から何もされていないのか、潮江先輩は奴をナメている。
ヤられる。絶対ヤられる。
「もう貴様の幻術は効かん!」
クナイを片手に、坂田銀千代へ突っ込んでいく潮江先輩。
「ついでにその首貰っ…」
――――バギャアアッ!!!
「ぶへえっ!!」
やっぱりな、だと思った。
坂田銀千代は、壁に激突した潮江先輩に近付き、ガシッと顔を掴んだ。
『天女なんてほざくのは、このお口かな?あーん?』
「ぐああああ!おま、ちょ、痛あああああっ!!」
問答無用で亀甲縛りにされる潮江先輩。縛られた潮江先輩が、ちょっと気持ち悪いと思った事は黙っておこう
『さて、』
坂田銀千代が、こちらへ向いた。
『悪いが任務は失敗だ』
私たちが武器を構えた瞬間、奴は突っ込んで来た。
そして、あの女の「饅頭名人が作った饅頭があたしを待ってんだよォォォォ!」という叫び声と共に、意識が飛んだ。
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