これでも一応同級生です
『返却でお願いします』
借りていた本を返すため、図書室へと出向く。これでも読書は好きな方なんです。
ちなみに、今日の当番は不破雷蔵らしい。
「いつもありがとう」
『?あ、はい』
何のことだろう。
「くのたまに上級生っていたんだな」
不破君の隣にいた鉢屋君が、私を見ながら呟いた。
おそらく不破君に言ったであろう言葉だったので、聞こえていない振りをする。
さて、次は何を借りようか。
本を選んでいると、図書室の障子が開いた。
「あ、不破と鉢屋!今日も仲良いね!」
「せっ、先輩!!」
「ちょっと二人とも静かに!」
バレバレな男装の先輩が来た。
どうやらこの先輩は、五年生も虜にしているようだ。鉢屋君はあからさまに嬉しそうだし、不破君も良い笑顔をしている。
よし、邪魔者は退散しましょう。
本は今度にしよう。
* * *
『おっと、あなたは確かジュンコさんでしたね』
図書室の帰りに生物委員の三年生、伊賀崎孫兵が飼育している毒蛇の“ジュンコ”に遭遇した。
『お散歩ですか?』
「シャー」
『ふふふ、随分お利口さんですね。頭を撫でてもいいですか?』
「シャー!」
許可を貰えたようなので、ジュンコさんの頭を撫でさせて貰っていると、生物委員の長がやって来た。
「おおジュンコ!こんな所にいたのか!」
ジュンコさんが竹谷君の元へスルスルと向かって行く。どうやら私は用無しになったみたいなので、さっさと退散を、
「お前が見つけてくれたんだな!ありがとな!」
ニカッという効果音を響かせながら笑う竹谷君。
『いえ、偶然見つけただけですし』
「でも助かったよ!ていうか、くのたまに上級生っていたんだな、何年生?」
いくら脇役といえど、同級生くらい覚えてないんですかね。良い笑顔だけど、失礼だからプラスマイナスゼロだ。
「おーい、ハチ!探してたのだ」
「あ、ハチってばナンパ?」
………増えた。
豆腐狂と非常識な髪型の奴が。
「あれ?くのたまの上級生?」
「上級生いたのか」
あなた達もですか。
「あ、でも前の実習で見たことあるようなないような……」
つまり覚えてないんですね。
「確か、名前は、あーっと、えーっと………」
つまり記憶にないんですね。
まあ所詮私は脇役ですし、知らなかったところで支障はないと思いますけど。
「あっいたいた!竹谷に久々知に尾浜!」
………また来た。
バレバレな男装の先輩が来た。
どうやらこの先輩は、忍たま上級生がいるところには必ず来るらしい。そして例の如く、同級生の三人はとても嬉しそうだ。
よし、邪魔者は退散しよう。
「今、鉢屋達とお団子食べてるんだけど、みんなも食べない?」
「え!いいんですか!」
「わーい!お団子だー!」
「先輩ありがとうございます!」
去り際に、チラリと鋭い視線をこちらに向けたバレバレな男装の先輩。
それは、近付くなと言う意味なのか。
ま、どうでもいいか。
(改めると、自分の存在薄いな)
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