意外と忍者してる自分
『失礼します』
あ、どうも。
永遠の脇役、いろはです。
少し用事があって、学園長先生の庵に来ています。
「うむ、入りなさい」
行儀見習いで習った通りの作法で、静かに中へと入る。
「おお、お主か。えーっと、」
『いろはです』
でました、脇役ならではの“名前が記憶にない”状態。
「そうじゃったそうじゃった!最近物忘れが酷くてのう」
『いえ』
何とまあ、わかりやすい言い訳か。
でも、脇役だから仕方ない。
サッサと本題に入ろう。
『山本先生には話したのですが、嫁ぎ先が決まりましたので、途中退学の申し出に参りました』
「……そうか、くのたまの上級生はお主だけじゃから寂しくなるのう」
『はい、卒業までいたかったので残念です』
敢えて、嫁ぎ先は言わない。
敢えて、就職先が決まったことも言わない。
私は、嫁いだ後に勧誘され、就職するのだから。
「………お主とは、また会うことになりそうじゃの」
『………そうなれば、いいですね』
これは全部知ってるな。
あーやだやだ、忍者にとっては筒抜けってことですかね。
『では、また改めて退学届等を持って来ます』
「うむ」
私は、静かに退室した。
(辞めてすぐに任務なんて、)
これでも平凡かしら
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