勧誘にしては雑過ぎません?




 
 
 
「や、久し振り」

『どうも』



くのたまの保健委員である私は、薬品と救急箱の補充に医務室に訪れていた。



あ、メインの医務室は忍たま校舎側にあるのですが、実はくのたま校舎にも医務室はあるんです。



くのたまは基本こちら側で治療しますが、重傷だったり、急を要したり、通り道だったり、善法寺先輩目当ての場合は忍たま校舎の医務室も使用します。



「相変わらずいろはちゃんは素っ気ないね。おじさん悲しいよ」

『善法寺先輩ならいませんよ』

「話も聞いてくれない」



おいおいと泣く振りをしているのは、タソガレドキ忍者隊の忍組頭である雑渡昆奈門さんです。所謂、曲者です。



『善法寺先輩だけじゃないんですが、今忍術学園は』

「知ってるよー」

『……あ、そうですか』



説明は不要のようです。



「今日はいろはちゃんに用があってね、来ちゃった」

『そうですか』



はて、私に用なんて珍しい。



『脇役に一体何の用ですか?』

「うーん、脇役だなんて思ってないよ。いろはちゃんは平凡だけど、それは忍術学園の中だけの話だからね」

『恐縮です』

「まあ、それだけ忍術学園の育成レベルが高いって事だよ」



にっこりと笑う雑渡さんは、あからさまに怪しい。



そんなに褒めないといけないくらいの用事なのか。



『雑渡さん。それほど褒めてくれた私に、どんな用事が?』



今までにこにこ笑っていた目が、いきなり鋭く光った。



何か、嫌な予感が……



「いろはちゃん、モブタケ城の若様から見合いの話があるんでしょ?」

『…………』



何で知ってるんですか。



まだ口外してないはずなんですけど。



『それが何か』

「実は今度狙う城がね、モブタケ城なんだよねー」



ああ、なるほど、



見合いを成功させて、モブタケ城に嫁ぎ、タソガレドキが攻めて来た頃合いをみて若様と城主をサクッと殺ってくれってことか。


 
「だからさ、うちに就職しなよ。私いろはちゃん好きだし」

『適当ですね』

「殿には私から適当に言っとくから」

『本当に適当ですね』



父上、母上、どうやら私はくの一人生を送ることになりそうです。











(詳しいことはまた今度ねー)
(あ、はい)
勝手に進む就活



 




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