媚びよ、上級生!(7/9)




 
 
 
「何なんだあの天女はっ!!」



ダンッ!と医務室の床を叩く仙蔵。相当苛々しているようだ。



「あと、留三郎お前だけだからな作文ネタ使わなかったのは。これだから空気読めねぇ馬鹿は困るんだよ」

「何をぉっ!文次郎てめぇなんか最後まで誘い文句言えてねぇだろうが!!」

「何だとぉっ!!」



ああ、また始まっちゃった。



前回、天女課題の成績が五年生に負けたので気合いはバッチリなんだけど、何ていうか……



僕は、忍装束に付いた枯れ葉を取りながらポツリと呟いた。



「変わった天女様だよね」



そう、変わっているのだ。



小松田さんのお手伝いを始めるまでは、五年生がべったりで近付けなかった。だから、お手伝いを始めたここ数日間に僕たち六年生が攻めに行ったんだけど……、まあ見ての通り惨敗である。



「……もそ、五年も苦戦しているらしい」

「そうなのか?私はてっきり五年狙いの天女かと思ったぞ」



ということは、今回悪役の四年生が狙いということなのだろうか。



もし課題点を稼ぐなら、逆転狙いにしないといけないのか。これはまた仙蔵が燃えるな。前回鉢屋に負けたから。



「それにしても、あの天女は随分と個性的なようだな」



若干苛々した表情の仙蔵。それもそうだ、仙蔵はどの天女様にも人気だったのに今回は口説き損ねたんだもの。



でも、確かに個性的な天女様だ。天女様の共有情報は、監視役をしている者から忍術学園全体に伝達される。



今までの天女様情報は大体共通していて「今回も猫被りだ」「〇〇が狙いらしい」「〇〇が好物だ」「虫が嫌い」などという、天女課題を遂行する上で作戦を立てやすい内容だった。



それが、今回僕たちが共有している情報は「寝言が多い」「独り言が多い」「寝る前は塩を盛る」である。



全くもって作戦の立てようがない。まず何なんだ寝る前に塩を盛るって!!何かの呪いなの?!僕らを呪ってるの?!この天女様こわい!!


 
僕はまだ自己紹介の時しか喋ったことがないから知らないけど、会話も成立しないらしい。会話が成立しないってどういうこと?!



とりあえず僕は保健委員だし、天女様も絶対怪我するだろうからそれまでおとなしく待っていようかな。



うん、そうしよう。



 








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