正しい天女の過ごし方(4/8)




 
 
 
部屋まで送られた私は、隅っこで座っていた。



壁から「やっほー」と頭を出した紺ちゃんに、本気で塩を投げつけようとした時に奴らはやって来た。



「天女様!授業終わったから話そうぜ!話題ねぇけど!はははっ!」

「お願い八左ヱ門、黙ろう」



まず入って来たのは、今朝の二人。相変わらずテンションの差が激しい。そして、竹谷さんはウザい……あ、ゲフン。えっと、竹谷さんは、えーっと、ウザい。



少し遅れて入って来たその他大勢。その中の一人である双子の片割れの忍者が、私を見た瞬間に駆け寄って来た。



「聞いてくれ天女様!昨日のテストが返ってきて、一番良い成績をとったんだ!」



どっちがどっちか分からないが、多分いつも不機嫌な方だと思う。今は不機嫌の欠片もなく、もの凄いにこやかな表情である。



「あっ、べ、別に、お前に褒められたくて頑張った訳ではないからな!」



えっと、これは、褒めろってことなのだろうか。つーか、何故私に報告するのだろうか。まあ、どうでもいいけど。



チラチラと、こちらを気にするように視線を向ける双子の片割れの忍者。しかし、何故私に報告したんだマジで。友人でない誰かに褒められたいということなのか。でも人を褒めたことってないんだよな、友達いないし。



「ほら卑弥子、褒めてあげなよ」



横から、紺ちゃんのやる気のない声が聞こえてきた。



わかったよ、褒めりゃいいんだろ褒めりゃ。



褒める、か。



褒める、褒める、褒める…。



とりあえず、唯一浮かんだ褒め言葉を言ってみた。



『よ、よっ日本一』

「…………」

「ぶっ」



隣で見ていた紺ちゃんが吹いた。



「ブフッ」

「ブッ」



ウザめの竹谷さんと髪の毛すごい忍者も吹いた。



何なんだ、一体。



もしかしてミスったのだろうか。



『え、あの、褒め間違えましたか』

「い、いや、間違えてない、です」


 
何なんだ、一体何なんだ。



正面にいる双子の片割れの忍者は何ともいえない顔だし、もう一人の双子の片割れの忍者は下を向いて小刻みに震えている。



ウザ谷さんと髪の毛すごいの忍者はどこかへ走っていったし、睫毛の忍者と朝のテンション低めのサラスト忍者は何か固まっている。



ちなみに紺ちゃんは後ろで爆笑している。



何なんだ何なんだ!一体何なんだこの微妙な空気は!それよりもう用がないなら去れよ。褒めただろ!



頑張って褒めた双子の片割れの忍者を見ると、微妙な表情でこちらを見ていた。



もう一回褒められたいの?もう一回褒めればいいの?



「よっ、日本一」



双子の片割れの忍者は、黙ったまま去っていった。



「僕らも行こうか、ね?」



それに続き、今朝のテンション低めのサラスト忍者が、残りの双子の片割れの忍者と睫毛の忍者を連れて部屋を出て行く。



………一体何なんだ。



私は、未だにゲラゲラと笑っている紺ちゃんを睨み付け、塩を投げつけた。南無。



後半はこいつの笑い声しか聞いてない気がする。



それにしても、あの忍者たちは何しに来たんだ。



 








[33/56]




back

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -