危険な日のち安全な日(6/6)
聞いて欲しいことがある。
こちら、竹谷八左ヱ門。少し前に、勘ちゃんと兵助の監視を交代した。
今頃は、少し遅めの夕餉と風呂に入っているだろう。
今回の天女は、風呂が早い。女の風呂は長いと聞くが、というか今までの天女も長かったのだが……
部屋でワシャワシャと髪の毛を拭いている天女。俺が言うのもなんだけど、もうちょっと静かに拭いた方がいいんじゃないだろうか。
そんな感じで監視をしていた時だった。ふと開けっ放しの障子の影に、蛙が一匹座っていた。
あ、
あ、
あ、い、つ、は!!?
毒蛙の毒之丞だぁぁぁぁ!!!
何で?!何で今このタイミングでお前はそこにいるんだよぉぉぉ!!
ああああああっ!!こん太といい毒之丞といい、何で俺が監視役の時に限って脱走するんだぁぁぁっ!!
俺が狼狽えていると、天女は小皿を出して塩を盛り始めた。
えええぇぇえっ?!!
何か天女が塩盛ってんですけどぉぉぉっ!?
そ、そういえば、昨日の担当だった兵助達が塩がどうのこうのって言ってたような……
この天女、朝も塩被ってたよな。
塩、好きなのか?
今までの天女達は、甘味や簪なんかが好きだったけど、この天女は、し、塩?
簪とかは高くて買えなかったけど、塩なら買える。
君に似合う塩を買ってみたんだけど、どうかな?
………とか言って!
おほーっ!
どうこれ!
もしかしてもしかすると、天女が俺に惚れちゃうかも!よしっ!その作戦でいこう!
天女への贈り物作戦が決まり、いつ塩を買いに行こうかと考えていると、天女が入り口の障子を向いた。
あ、毒之丞も天女を見てる。
ま、まさか、この天女、また
サラ。
ん?
毒蛙に、塩を、振りかけた?
『何って、塩盛ってんですけど。つか見たら分かるだろ空気読めよ去れよ』
やっぱりだぁぁぁぁ!!
会話してる!この天女毒蛙と会話してる!
しかもちょっとご機嫌斜めな感じだ。よし、塩盛ってるときは話しかけないようにしよう。
『どの毒之丞だよ!誰だよ!知らないよアンタなんか!べらべら喋る暇があったらとっとと私の視界から消えろボケェ!!』
ご立腹だぁぁぁぁ!
毒之丞!お前天女に何言ったんだ!
『無礼も何もねぇよ!いいからどっか行け!!』
何?毒之丞お前「無礼」だなんて言ってんの?お前の性格って結構上からなんだな。
『去れボケェェエエエ!!』
うおおおおっ!!天女が塩ぶん投げた!
天女は跳び逃げていく毒之丞を横目に、パンパンと手を叩いた。
な、何かこの天女、格好いい!!
その数分後、尾浜と久々知はどこか上機嫌の竹谷と監視を交代した。
人知れず、竹谷八左ヱ門の好感度がまたアップした。