真夜中の緊急会議(4/5)




 
 
 
真夜中、皆が寝静まったであろう時刻にそれは始まる。



「うむ、集まったようじゃの先生方。では今より緊急職員会議を行う」



校舎から少し距離のある離れの小屋で、全学年の教師が集められる。



もう何度目かになる、この真夜中に行われる緊急職員会議。



「今回の“天女課題”についてじゃが、前回の天女で悪役を担当した五年生に護衛役をしてもらう事にした」



天女様が忍術学園に初めて現れたのは、今は懐かしい。



“ぎゃくはー補正”という能力を持っており、こちらに好意がなくても強制的に恋慕の状態になるのだ。



一人目は運良く山賊に殺され、我々の目が覚めたが、すぐに新たな天女様を迎えまた惑わされる。



私達は訳も分からぬままそれを繰り返し、数人目の天女様を迎えた時だった。



偶然一人の忍たまが我に返り、その天女様を締め上げた。



そこで、命乞いをする天女様から聞き出したのが“ぎゃくはー補正”という能力。そして、それの解き方。(大体の補正は自分が気付くと解けるらしい)



さらに天女様は、命ほしさに様々な情報を喋ってくれた。



これからも来るであろう天女様について、どんな知識を持っていて、何を目的にやってくるのか。



特に重要な情報だったのは、天女様の種類や好みの事だった。



聞き出せるだけ聞き出し、天女様には天に帰って貰った。



この一件で分かったことは、天女様は我々にちやほやされたいのだと。



天女様によっては男装したり、記憶喪失の振りをしたりして、知識がないと隠そうとするのだと。



“つんでれ”とかいう性格にも弱いのだとか。



この天女様のお陰で、私達は二度と“ぎゃくはー補正”には惑わされなくなった。



しかし、何度も何度も現れる天女様。平和な世から来た天女様を天に召すのは、蟻を潰すより簡単だ。なので、どうせなら色の授業の一貫として使わせて貰おうという方針になった。



基本は天女様に媚びるのだが、常に側にいる護衛役と、敵対する悪役に別れ、誰が天女様を射止めるかを競うのだ。



護衛役は、天女様の一番近くにいられるので取り入りやすい。しかし、日替わり担当で毎日は関われない。



悪役は、ずっと敵対するもよし、和解し取り入るもよし。




その他は、自由選択で行動できる。


 
この天女課題は点数制で、課題点、演技点、ボーナス得点の三種類がある。



課題点は天女様を射止めた者が貰え、演技点は自分の役によりなりきった者に与えられる。



ボーナス得点は少し特殊で、天女様が贔屓している者以外が天女様を射止めると貰える点だ。例を挙げると、五年生を贔屓にしている天女様を六年生が射止めれば発生するし、個人を贔屓していれば、それ以外が射止めると貰えるという得点だ。



これで獲得した点は今学期の成績に加算され、ビリからトップへの逆転チャンスもある。



この制度を作ってからというもの、天女様が現れた日の夜に、我々教師は忍たま達の配役について緊急職員会議をするのだ。









* * *










「我々の担当する六年生は、天女に取り入る役に決まりました」



六年生から順番に、この天女課題での配役を発表していく。



「護衛役の五年生の日替わり担当表になります、先生方も一度目を通していて下さい」



私は回されてきた用紙に目を通す。



今日の監視と明日の担当が久々知か。じゃあ明日の委員会は久々知なしか。キツいなぁ。



「四年生ですが、今回六年生に譲って貰った悪役をして貰おうと思っています」



ほう、今回は四年生が悪役か。



「四年生が悪役をするのは初めてなので、少しフォローの方をお願いします。あと、斉藤タカ丸に関しては忍たまになって日が浅いという事で、別行動で取り入る役にしました」



なるほど、確かに個性の強い学年だからフォローが必要かもしれないな。



委員会の時に、タカ丸を通して色々聞くようにしよう。



「三年生は傍観する事になりました。上級生の色の技術や心理の観察力の向上に努めます」



三年生は、次に学年が上がれば上級生の仲間入りだ。そのことを踏まえての傍観という事か。



「二年生は悪役寄りの警戒をして、徐々に懐いていくという役をしてもらう事になりました。」



二年生もなかなか難易度を上げてきているな。



「一年い組は勿論警戒です。どうやら天女達の知識の中でも一年い組は優秀という観念があるようですし?」



くっ、安藤先生め。わざわざこっち見て言わないで欲しい!



「……一年ろ組は、前回とは逆で、取り入る事にしました」


 
なるほど、確かに天女達はろ組の生徒の事を可愛いと騒いでいたしな。



「さて土井先生。最後は一年は組じゃ」



学園長先生に促され、山田先生と目線を合わす。



「えっと、一年は組ですが、個人設定になりました」



勿論これには理由がある。



「それぞれの役は、この用紙に書いてある通りです」





―――――――――――


猪名寺乱太郎(取り入る)
摂津のきり丸(取り入る)
福富しんべヱ(取り入る)
加藤団蔵(傍観)
二郭伊助(傍観)
笹山兵太夫(警戒)
夢前三次郎(傍観)
佐武虎若(警戒)
黒木庄左ヱ門(警戒)
山村喜三太(取り入る)
皆本金吾(警戒)


―――――――――――





「ふむ、なる程のぉ。一年は組はこの方が良いかもしれんのぉ」



そう、前回や前々回だけに限らず、一年は組に役を与えるとその役を意識し過ぎて空回ってしまうのだ。



そして性格的にも警戒や傍観などが出来にくい子達もいるので、今回は自分に合った役を自分で決めて貰ったという訳だ。



「……これで、生徒達の役が決定したようじゃな」

「「 はい 」」







ああ、また始まるのか。







忍たま達による喜劇、いや悲劇が。




 








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