不運というより不幸(3/4)




 
 
 
私は所謂、見えちゃう人。



ただ“見える”だけの普通の人。





両親の遺伝を見事なまでに受け継いだ私達兄妹。馴れ初めは知らないがというか知りたくもないが、霊能力バリバリの母と霊に取り憑かれ放題の父という最悪のコラボレーションが運命的に出会っちゃったらしい。ああ、本当どうでもいい。



兄は母の能力をそのまま受け継ぎ、私は見えるという能力だけを受け継いだ。



…………と思いきや、父の取り憑かれ体質をもろ受け継いでしまった。



運が悪いというかなんというか。



お陰様で、今の今までずっと霊に怯えながら生きてきた。



ちなみに両親は離婚したのだけど、私は勿論父方に引き取られた。



兄が母の指導の元バリバリの霊能力者に育っている傍ら、私と父は沢山の霊と同棲しながら毎日ポルターガイストにビビっていた。マジ笑えない。



その父は一緒に暮らし始めて一年もしない内に、死んだ。



母曰く、質の悪い霊に呪い殺されたのだとか。挙げ句の果てには「卑弥子、アンタこのままだと死ぬよ」と言われた。何じゃそりゃと思った。なんで母親にお前死にます宣言されないといけないのかと。



でも、父が死んだことにより状況が一変した。



霊に好かれやすく取り憑かれやすい父と私の天秤が、一気に傾いたのだ。



今度は母方に引き取られたが、誰と住もうがポルターガイスト等の心霊現象がなくなる事はなかった。そして、徐々に生死に関わるような心霊現象にも遭い始めた。



ただ見えてるだけでは、このまま父と同じ様に霊に殺されてしまう。



ある程度有名な母は、日々日本中(たまに海外)を飛び回っていて不在。私は兄に助けを求め、やっと普通の女の子らしい生活を迎えつつあったのだ。









なのに、神隠しとか!




何なんだこの不運体質!!




いや、寧ろ不幸だよ!!




私一人という事は、除霊するのは恐らく無理。つまり、逃げ回らなければならない。



さっきだって、少し気を緩めていただけでアッチに連れて逝かれそうになった。



もうやだ、マジでこわい。



鞄の中には安全地帯確保の為の盛り塩グッズに、兄が作った特殊な数珠、後は手鏡とかそこらへんの女子グッズ。





あれ、財布ない。



そうだ、今日財布忘れたからご飯食べれなかったんだった。



 
これヤバくね?これ死ぬくね?これ生きていけなくね?



よし、この前の誕生日に奮発して買ったパワーストーンを売ろう!



ごめんね石っころ、さすがに兄貴の数珠は売れないや死んじゃうから。









「あ……あの、天女様?その、大丈夫ですか?」

『え、はいお気になさらず』



私に声をかけてきた黒い忍者服の男の人は「こちらです」と言ってる。何か優しげに笑ってるけど、こいつもアッチ系か?



私は彼の足元を見て影があるのを確認すると、試しに彼を指で突いてみた。





グサッと。





「いっ!な、何ですか?」



思ったよりぶっすりと突き刺ささったようだ、なんか痛がってる。よし、人だ。



『すいません気にしないで下さい』

「は、はあ」



とりあえずどこかへ案内したいらしい彼は、私を誘導する。



うん、どこ行くの?



てかそれよりさ、



『ところで、近くに宿とかないですか野宿は嫌なんで。というかどこ行ってんですか』

「………天女様、話聞いてました?」

『え?』









なんか、私ここに住むらしい。




 








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