不運というより不幸(2/4)
「………という訳で、今まで何人も天女様を保護していたのじゃ」
『そうなんですね』
「違う世界から来てしまって心細いだろうが、ここなら安全じゃ」
『そうなんですね』
「衣食住は心配しなくても良い。ただ、天女様が知っている忍術学園の知識だけ外部に漏らさぬと約束して貰いたいんじゃが」
『そうなんですね』
「おおそうじゃ。天女様が暮らす長屋なんじゃが、偶然、忍たまの方しか空いておらんのじゃ」
『そうなんですね』
「はて、何年生の長屋じゃったかのう?」
「五年生です」
「そうか、すまんのう天女様。五年生の長屋でよろしいですかな?」
『そうなんですね』
とりあえず聞き流していたら、今度はどこかへ移動する話になっていたらしい。笑顔の優しげな黒い忍者服の男の人が「こちらです」って言ってる。
え、なに、どこ行くの?
私は立ち上がって、その笑顔の優しげな黒い忍者服の男の人が手招きしている方へ歩き出した。
「……天女様?こっちですが」
『え?』
後ろから呼び止められ振り返ると、不思議そうに私を見ている別の黒い忍者服の男の人がいた。
視線をズラすと、さっきまで話していた一番偉い人とか、綺麗なお姉さんとか、その他もろもろの黒い忍者服の人達も不思議そうに私を見ている。
『…………』
まさか、
私を案内しようとした笑顔の優しげな黒い忍者服の男の人をもう一度見ると、いつのまにか服はボロボロで顔も所々骨が見えている。
そして、男は影がなく半透明だ。
―――――チッ
その男は私を睨み付け、憎らしげに舌打ちするとそのまま消えた。
『……………あ、あ、』
「「……?」」
「あの、天女様?」
止まっていた思考や硬直した体、音が発せられなかった喉が一気に動き始めた。
『あっぶねェェェエエっ!!!油断した!!マジで油断した!!油断してついて逝っちまうとこだったァァァァァ!!!』
私は屈んで頭を抱えた。
そうだ、そうだった。
神隠しにあったとか、ここが違う世界とかそんな事どうでもよかった!!いや、神隠しの件はどうでもよくないけどとりあえずどうでもいい。
私がどこにいて何をしようと、一番危険視しないといけないのは、“霊”だ。
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